時計
ふと思い付いたからメモ代わりに。
世界には時計が溢れていた。
人には人の。
猫には猫の。
犬には犬の。
全ての生き物の胸元には時計がついている。
種によって時計の針の進みは違うが、全ての種が刻一刻と生きては死に向かっていた。
ある日地球を作った神様が地球の時計を見て言った。
「人が増えすぎているせいで、針の進みが早まっている」
右から左に進んでいた時計の針。
人類の時計だけが左から右へと進むようになった。
世界中の人々は驚き戸惑う中、老人達は歓喜した。
「針が戻るということは若返るということだ!なんと素晴らしいことだろうか!これぞ神の奇跡だ!」
刻一刻と戻る命の針。
生まれたばかりの赤子が退治の状態に戻ってゆっくり死んだ。
「針が戻るとはこういうことなのか!神はなんと残酷な事をするのだろう!」
死んだ我が子を手に涙する親達の声が虚しく響く。
日々死んでいく命。
日々若返る老いた命。
喜びと悲しみが混じり合う混沌とした世界。
「これは天罰なのだろう」
世界の片隅で誰かが呟いた。
街には捨てられ死に絶えた赤子がゴミの様に転がっている。
少年少女は希望もなく座り込んでいる。
喜んでいた老人達も30代、20代、10代と若返るにつれ恐怖に震えた。
自分達も最後は赤子になって死ぬのだと。
「神よ、針の進みを戻して下さい!」
世界中の老人だった若者達が神に祈った。
来る日も来る日も。
飽きることなく、諦めることなく。
そして人はいなくなった。