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第31話 無謀な戦術


「ゴードン准将、いきなりお呼びしてすみません。緊急でお話がありまして」


 シャーロに連れられて准将が部屋に入ってくる。大柄な体躯を揺らしながら椅子に深々と腰掛けた。第一印象は強面の熊のような人物だが、これまでの言動や態度から相当情に脆い人物とみて間違いない。今回の作戦にはなんとしても彼と要塞の戦力の協力が必要だ。


「いやいやレイ少佐の願いだったら好きなだけ聞こう。君たちがいなかったらこの基地自体が消え去っていたのだからな」


「ありがとうございます。これから話す計画は極秘かつ露呈するとクーデターの罪に問われる非常に危険なものです。もし話を聞いて協力できないと言われたら、しばらくあなたを拘束しなくてはならない」


ここで素直に話を聞いてくれなければ脅しでなく本気で要塞を我々だけで制圧しなくてはならない。できればそんな手荒な真似はしたくないのだがもう時間がなかった。


「やけに物騒じゃないか、まさか君らの艦長を助けに行くっていうんじゃないだろうな?」


「その通りです。そのためには基地の守備隊の協力が必要なのです」


准将はしばらく口髭を撫でながら目を閉じた。


「いいだろう。ただし最後に必ずマリーの無実を証明してくれ。わし自身も彼女が反乱をおこしたというのはいまだに信じられなくてな」


「感謝します。我が艦長の無実必ずや証明してみせましょう。それでは作戦について話します。ブレットとシャーロ、エリスも聞いてくれ」


 なんとか第一関門クリアだ。平静を装ったが内心かなり肝を冷やした。ここからは作戦の説明だ。作戦というにはあまりにお粗末なものだったがより綿密な計画を練る余裕はもうなかった。


「まず今回の作戦の大きな障壁は2つあります。1つ目はマリーの所在がいまだに掴めないこと。これに関しては、ブレットとエリスが王都に潜入して調査してもらいます。時間的な余裕がないため手段は問いません」


「了解だ。まさか少佐の命令でまた姫様を誘拐することになるとは夢にも思わなかったが善処しよう」


「私も全力で臨ませていただきます。手段を問わないのであれば魔導院の禁忌に触れるような魔術も使わせていただきますがよろしいでしょうか」


「ああ、禁忌だろうがなんだろうが方法は問わない。確実に居場所を突き止めてくれ」


「了解!」

二人とも緊張したお面持ちで返事をした。正直今回の作戦の成功の可否は二人にかかっている。残念ながら俺は潜入調査に関しては役立たずだ。


「それでもう一つの障壁とはなんなのかね。守備隊としては何を支援すればいいのだ?」准将はヒゲを撫でながら尋ねる。


 「2つ目の障害は王国に駐留する第1から第3艦隊の戦力です。第4艦隊はフロレアル共和国に駐留していますが3艦隊はすでに王国中央部に戻っています。マリーを奪還しても王国主力部隊と衝突する可能性が高いです」


「わしら守備隊の戦力では到底太刀打ちできんぞ。少佐、どうするつもりなんだ?」


「守備隊の皆さんは王都西方に展開しブレットとエリスの王国までの道のりを支援してください。姫は確認後わたしが飛行艇にて確保し、後方で待機した旗艦クラウソラスへと移送します。その後はクラウソラスの撤退の護衛と攻撃してくる敵地上部隊の撃退をお願いしたいです。この基地方面に展開する敵艦隊はわたしが処理します」


「敵艦隊の処理って…… いくらレイ少佐でも無茶苦茶です。王国の主力艦隊は総勢200隻を超えているんですよ」


「もちろん無策で玉砕するつもりはありません。ブレットとエリスはマリーの所在を確認後、今回の首謀者を探してもらいます。正義はこちらにあることを示せれば敵の足並みを乱すことはできます。また、シャーロには第5艦隊の所属艦に連絡を取って協力してもらうよう要請します。他の艦隊や基地にも彼女を信じる者はいるはずです。こちらの援軍を増やし敵の指揮系統を乱せれば十分に勝ち目はあります」


「それでも、敵の撹乱がうまくいかなかったら少佐が3個艦隊と戦うことになるんですよね…… やっぱり無謀としか思えません」


「秘策があります。かなりギリギリですが援軍なしでも三個艦隊を殲滅できるような……」


「本当に無茶な作戦だな。だがそれしかないんだろう? 私は少佐の部下だからな、命令には従おう」


「わしらも大したことはできんだろうが、協力させてもらおう」


「私も頑張ります。ただしこれだけは約束してください。レイ少佐、必ず生きて戻ってきてください」


「ああ、任せておけ」


これが独立試験大隊設立から初の任務だ。そしてもしかすると最初で最後のミッションになるかもしれない。准将と隊の仲間たちが揃って敬礼した。


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