第98話企業の超危険な裏の実体
光と校長は刑事の運転するタクシーで光の家に戻った。
そして、玄関に入るなり、楓と華奈の猛口撃を受ける。
「もう・・・変なところに行くからそうなるの!」楓
「自分ばかり美味しいもの食べて!私なんか何も食べられなかった!」華奈
「春奈さんが動いてくれなかったら、どうなったの!危なかったでしょう!」楓
「校長先生にも迷惑かけて!だいたい光さんって不用心なの、昔から!」華奈
「ほんと、明日の朝まで柱に縛りつけておかないと!」楓
「だったら、私この家に泊まって、朝まで監視する!」華奈
これには、一緒に入った校長と刑事も、「口あんぐり」になる。
そもそも「猛口撃」で玄関から動くことができない。
「まあまあ・・・」
春奈が出て来た。
春奈は、それでも大人、少しは落ち着いている。
春奈の取り成しで、やっとのことでリビングに入ることができた。
「本当にご迷惑をおかけしまして・・・」
圭子が校長にお茶を出しながら、頭を下げる。
「いえいえ・・・無事でよかった」
校長もホッとした顔になる。
光はいつものぼんやりとした顔をしている。
校長が説明をはじめた。
「それでもね、春奈先生から話を聞きましてね」
「どうも、あの晃子さんはともかく、晃子さんのバックにいる企業が怪しいということを、坂口さんから聞いていたこともあって・・・」
「一層心配になりましてね、それで祥子先生も呼んだのです」
「ここでトラブルになれば、せっかく練習してきたことも無駄になるし」
「多くの学生や教員が期待している光君の素晴らしい音楽を聴けなくなるし」
「学生の安全を護るのは、校長の責任です」
校長は声を落として話す。
「はい、もう・・・校長先生が坂口さんに連絡してくれなかったら」
「私も動くことが出来ませんでした、道を変えたのも、追手を巻くため」
「それでもやっとのことで尾行を巻くことができました」
刑事は少し青い顔をしている。
「もう・・・」
楓はまだ怒っている。
「どうして、危ないことばかりするの!」
「まずボクシング部、柔道部、野球部、そして怪しい筋・・・」
「もし、何かあったら華奈ちゃんどうするの?」
楓は華奈の手を取った。
華奈は真っ赤な顔になった。
涙もポロポロと流れている。
「いや、楓さんの言う通りですよ」
刑事も頷き、話しだす。
「私たち当局の調べで、未だ完全な証拠はないのですが・・・」
「あの企業の裏には、とんでもない武装集団がいます」
「その武装集団を使って様々、政財界に裏工作、つまり脅しをかける」
「脅しが効かない場合は、金や・・・女性の前で言いにくいのですが・・・」
「いわゆるプロの女性を使って悪さをする」
「写真を撮ってばらまくと言えば、たいていの男は降参する」
「最近は、プロの男で女性政治家や経営者をターゲットにしているらしいが・・・」
「ただ、被害にあった者は、汚名を恐れて公表しない」
「当局としても、恐喝されていても、確たる証拠がないと、なかなか踏み込めない」
「あの企業お抱えの演奏家などは、単なる道楽、イメージ作りです」
「都合が悪くなれば、簡単に捨てられる」
「本当に祥子さんは、上手に足を抜けました」
「変に抵抗して、姿を消した演奏家は数知れない」
「光君も本当に無事でよかった」
刑事はここまで一気に話した。
光を除き全員が真剣に聞いている。




