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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第87話光の発想と晃子の部屋

メールへの結論は速かった。

もちろん「お断り」しかない。

ただ、コンサートを控え、有名ヴァイオリニストの晃子に恥をかかせるわけにはいかない。

その上での思案をしている。


「どうやって、穏便に断るかなあ・・・」

光はスマホをじっと見つめていた。


一方、光にメールを送った晃子は、その胸をいつになくドキドキさせながら光の返事を待っていた。

「本当は今日でも良かった」

「でも、今日だと食事が一緒に出来ないし、明日は違う練習があるし」

一か月後の弦楽四重奏の本番に向けた練習であり、第一ヴァイオリニストが休めば練習が成り立たない。

本当に、違う練習があることが、もどかしかった。

休もうかと思ったたけれど、晃子もプロの演奏家である。

なかなか、いい加減なことは出来ない。


「それに、明後日なら・・・」

明後日からコンサート当日までは、全て開けてある。

何も心配はない。

「音楽部の練習を終えて、食事・・・そして」

晃子は、ますますドキドキしてきた。

「スタジオがこの部屋ってことわかったら、あの子どんな顔するかな」

晃子は自分の部屋を見渡した。


何より大企業丸抱えのイメージ演奏家である晃子には、完全防音のマンションの部屋があてがわれている。

ホテルのスウィートなみの広さとベッド、調度品、グランドピアノまである。

晃子は最初からこの部屋で光と「練習」をすると考えていたのである。

「少し調整」などは、単なる部屋の掃除ぐらいしかない。


「うーん・・・メール見ていないのかな・・・」

「ああ、もどかしい・・・」

晃子は、だんだんと焦れてきている。

そして、その意味で、主導権は光に奪われている。


光はようやくメールの返事を思いついた。

「はっきり断らなければいいかな」

つまり、曖昧な返事にしようと考えた。

晃子の指定する練習日は明後日、まだ少し時間がある。

それに、音楽部での練習は毎日で、明後日は晃子も来るはずである。

「それまでに、言い訳を考えればいいや、今考えるのは面倒だ」

「適当に返事しておこう」

いつもの、いい加減な光が戻って来た。

「おそらく、大丈夫だと思います、よろしくお願いします」

その文面でメールを返したのである。


「おそらくって、いい言葉だなあ・・・」

光は、自画自賛をしているほどである。


「うーん・・・おそらくか・・・」

光からの返信を受け取った晃子は、少し首をかしげた。

万が一、来ない場合もあるのかと不安になる。

「でも、よろしくお願いしますって書いてあるし」

なんとかなると思った。


「それに・・・来てくれればもうけものだ」

「来なかったら、ずっと追いかけてあげる」

晃子は、そう思った途端、ますます胸がドキドキしてしまった。



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