第84話晃子からの誘惑電話?
晃子との電話を終えた光は、またぼんやりとして楽譜を読んでいた。
別室から楓と華奈が戻って来た。
二人は、少し探るような表情で光を見る。
楓は光に声をかける。
「光君、電話だったの?」
光は素直に答える。
「うん」
楓はさらに
「・・・誰からか聞いてもいい?」
華奈は不安そうな顔をしている。
しかし、そもそも、十六歳の高校生が電話をしていたぐらいで、何故相手を言わなければならないのか、よくわからないけれど、とにかく自分を見つめる楓と華奈の顔が真顔になっている。
光は、少し首をかしげるけれど、簡単に相手のことを言ってしまう。
光
「えっとね、晃子さんだった」
「え?どうして?」
華奈の顔が、ますます真顔になる。
光
「うーん・・・今日の練習のお礼と・・・」
「・・・そんなんで?」
楓は、怪しいと感じた。
「お礼とって?他には?」
華奈も語調を強めた。
しかし、まさにこうなると尋問である。
ただ、光は、楓と華奈の心配と不安を、何ら感じ取っていない。
「うん、晃子さんね、オーケストラだけでなく、スタジオで一緒に練習したいって」
何ら考えることもなく、素直に応えてしまう。
「え?オーケストラとは別?」華奈
「二人きり?」楓
華奈と楓は、完全に「ムッと」した顔になった。
光は必死に抗弁をする。
「うーん・・・でもスタジオだったら冷房効いているしさ」
二人の尋問に光もタジタジになっている。
楓は少し怒り顔に変化した。
「そんな・・・冷房効いているからぐらいで、二人きりの練習?」
華奈は、完全に怒り顔だ。
「危ないよ、そんなの!」
しかし、華奈の「危ない」の意味は、光には全く不明。
「その練習日っていつ?」
楓も根掘り葉掘りになる。
光のタジタジとした答えが、一層火をつけてしまう。
「後で連絡あるのかな、そこまで聞いていない」
光は正直に答える。
「うーん・・・」
ここで、楓と華奈と楓は考え込んでしまう。
もし「連絡」があれば、何も考えていない光のことだ。
ホイホイ、フラフラと出かけてしまうに違いが無い。
そしてスタジオに入ったら最後、年上の美人でセクシーなヴァイオリニストの誘惑を必ず受ける。
そんなことになったら・・・いやそんなことは絶対に認められない。
楓と華奈は懸命に対応策を考えはじめた。




