第82話華奈の不安
「でも、だめ・・・あの晃子って人危険」
「最初から何か感じたけれど・・・」
「モーツァルトの練習が進むにつれて、段々光さんに近づいていくし」
「悔しいけれど美人だし、ヴァイオリン上手だし」
「スタイルいいし、私より胸も大きいし・・・」
華奈は光には言わないものの、様々なポイントで晃子を危険と判定している。
「うーん・・・以前母さんに聞いたことあったな」
「男に取りつく魔女」
「取りついて骨の髄までしゃぶって粉々にする魔女」
「思い出せないや・・・そうだ、後で楓ちゃんに教えてもらおう」
「うん、あの晃子って人は、きっと魔女だ」
ついには、「晃子魔女説」まで華奈の頭に登場した。
「さて、どうやって対抗するか・・・」
「顔はともかく身体では負ける」
「胸は絶対かなわない」
「だから色っぽさとかセクシーさは、完敗だ」
「若さでは勝つ」
「でもなあ・・・光さんって・・・」
「どういう女の人が好きなんだろう」
「ぼんやりしていて、よくわからないなあ」
「それが気になって仕方がない」
「子供の頃からかな・・・光さんは気がついていないけれど」
「今みたいに阿修羅が身体の中にいない頃から気になってしかたがなかった」
華奈は子供のころを思い出した。
「そういえば光さんが奈良に来るたびに光さんにくっついていた」
「そういうの覚えているのかな」
そうすると、胸がドキドキしてきた。
「ねえ、どうしたの?」
光と目があった。
「・・・何でもない」
その瞬間、華奈の顔が真っ赤になった。
組んだ腕の力が一層強くなった。
駅からの帰り道も華奈は、光を引きずるようにして帰った。
光の家に入ると楓が待っていた。
「へぇ・・・そうだったんだ」
楓は華奈と光の顔を交互に見た。
華奈は少し顔が赤いけれど、光は相変わらずぼんやりとしている。
「でね・・・」
華奈は楓に例の「魔女」について聞いてみようと思った。
そうなると光から少し離れてヒソヒソ話をすることになる。
「うーん・・・いなくはないんだけど・・・」楓
「だって、ずっと光さんのこと見ていたし」華奈
「うん」楓
「美人でセクシーで」華奈
「うん・・・」楓
「胸も大きいし」華奈
「胸はあまり関係ないよ・・・」楓
「そう?」華奈
「華奈ちゃん、まだいち十五歳だし、これからってこともある」楓
「そうかなあ・・」
華奈は少しホッとした。
「それに、胸だけなら、私のほうが華奈ちゃんより少しだけ大きい」楓
「楓さん、全くフォローになっていない」
華奈は少しむくれている。




