第78話コンサート準備など
楓と圭子は光の母の部屋で寝ている。
「まあ・・・阿修羅に東京まで呼ばれちゃったのか」圭子
「コンサートの当日、何かあるのかな・・・」楓
「うーん・・・」圭子
「阿修羅は何を考えているのかな」楓
「わからないけれど・・・」圭子
「いざとなったら春奈さんとか、華奈ちゃんにも・・・」楓
「もう感じ取っているはず」圭子
「そうか・・・もともと、みんな同じ血なんだ」楓
「その時には、地蔵様から、何かお知らせをしてもらうようお願いしてある」圭子
こっちでも不思議な会話が続いていた。
光は毎日、音楽部に通うことになった。
何しろ否応なく、華奈が定時間に迎えに来る。
「ほら、面倒くさそうな顔しないでください」
「こんなことだと、将来が大変」
「全く心配ばかりかけて」
楓と圭子さんがあきれるほど、華奈は光の世話を焼く。
「まあ、今から旦那さん教育しておけば楽かも」
圭子さんが笑う。
「旦那さんはともかく・・・でも、華奈ちゃんがいてよかった」
楓も胸をなでおろしている。
何しろピカピカの美少女華奈が光と歩いていれば、たいていの女子学生はあきらめる。
それでもあきらめない場合は、「遠い親戚」と言えば、たいてい「追及」がおさまるのである。
また、華奈を狙っていた男子学生たちも、光の「格闘技術」ゆえ、全く手が出せない。
あのボクシング部も柔道部も全く手が出ない強さだったからである。
コンサートの準備は順調に進んだ。
光の音楽性にほれ込んだ校長も積極的に手伝った。
「何しろ、あの光君の音楽を聴きながら、コンサートの準備が出来るなんて幸せさ」
「いろんな人に声をかけたよ、理事たちはもちろん、知っている限りの学者とかね」
祥子も同じように声をあちこちにかけた。
音大の教授やプロの演奏家で知っている限りに連絡をした。
事前に聴きたいという人がいれば、練習を録音して送ったりもした。
その甲斐があってか、コンサートの一週間前にチケットは完売となった。
柔道部顧問山下からは、うれしい申し出があった。
コンサートの警備員を柔道部が受け持ちたいとのことである。
確かに満員のコンサートは警備が必要であり、その分の経費も高い。
「ありがとう、野球部との一件も含めて」
校長は素直に礼を言う。
「いや、私も光君に相当失礼なことをしてしまって、少しでも埋め合わせをしたくて」
柔道部顧問山下も頭を下げる。
「本当は光君を大会に出したいのでは?」
校長は聞きたくなった。
「はい・・・しかし、それは考えましたが・・・」山下
「うん・・・」校長
「立ち会った柔道部員とか坂口さんにも止められました」山下
「うん・・・」校長
「あの光君の力は図抜けていると、しかし本人に全くその気がない」山下
「そんな光君を出してはいけない・・・と?」校長
「いや、それ以上に、光君が本気になったら、誰もかなわない」
柔道部顧問の顔が蒼ざめている。




