第77話光の音楽の才能とは?
「え?アハハ!」圭子
「ぷっ・・・」楓
二人とも笑うだけで、全く答えになっていない。
「ねえ、わからないって、それじゃ」
春奈は、二人の反応が全くわからない。
「あのね・・・」
楓がちょっとだけ光を見た。
「うん・・・」
それでも春奈には、何となく予想がついた。
圭子
「いつも通り、ぼーっとしていただけ」
楓
「何も反応なかった」
圭子
「ああ、でも、多少は笑ったかなあ・・・」
楓
「一番本人が覚えていないかもね」
華奈は、そう言われると、少し困った顔で、何も話ができない。
春奈は、
「まあ、そんなところだろう、だいたい光君が華奈ちゃんのことを思い出せなかったんだから時効さ、そんなもの」と思ったけれど、さすがに「目の前では」と思い、含み笑いにとどめた。
それでも「ふ・・・しょせん十五歳の小娘さ、簡単には光君あげない」と思っている。
ただ、当の光はボンヤリとしているだけであった。
圭子叔母さんと楓の手作りの料理の後、春奈は華奈を送りながら帰った。
「うん、まだ肌が少し焼けているけれど、そのほうが健康的かな」圭子
「それでもボクシング部とか、柔道部とか、いろいろ大変だったね」楓
「野球部は、どうにもならないね、聞いただけで嫌だ」圭子
「本当にマスコミも甲子園のこと騒ぎ過ぎ。だから野球部ってつけあがるの」楓
「私も単なるボール遊びで、何であそこまでと思う」圭子
「でも、音楽の才能は知っていた」楓
「うん・・・お母さんのすごい才能受け継いだのかな、きれいなピアノ弾いたもの・・・お母さんが生きていればねえ・・・」
圭子は涙ぐんだ。
圭子と楓がいろんな話をする間、光はニコニコと聞いている。
光にとって、普段は一人だけの、この家に人がいてくれることが、とてもうれしかった。
母のピアノを叔母さんが褒めてくれたことも、うれしかった。
光にとって、唯一の楽しいことは音楽、それもピアノを弾くこと。
それは、小さい頃、なんとなく弾いていたショパンを母が褒めてくれたことから始まった。
今でも母の笑顔が光の心に残り、それが光の母との一番の楽しい思い出になっている。
そのため、ピアノを上手に弾けるたびに、母の笑顔が目に浮かぶ。
そして、その時だけが光の心が癒される時になる。
いつものように、ベッドに横になると光は、一瞬のうちに眠りにつく。
それでなくても、音楽部の練習で疲れていたし、久々の叔母さんの料理で満腹だった。
「ふぅっ」
眠っている光を阿修羅が見ている。
「阿修羅さん、音楽の才があったんですね」
地蔵が並び立った。
「うーん・・・なくはないけれど、今回のはあまり手助けはしていないよ」阿修羅
「へえ・・・それにしてはいい音楽でした」地蔵
「ああ、疲れやすい子だから、倒れない程度には支えたけれど、音楽そのものはこの子の感性さ・・・阿修羅とは違う」阿修羅
「はい」地蔵
「それに、もうすぐコンサートってものをやるらしいからね」阿修羅
「そうなると体力持ちますかね。食が細い子ですから」地蔵
「ああ、その意味もあって、奈良から呼んだのさ」阿修羅
「少しでも食べさせないと、炎天下ですからね」地蔵
「そうだねえ・・・倒れられるのが困る」阿修羅
「ところで、問題の案件はいかが・・・」地蔵
「うーん・・・それがコンサート当日になる、だから頼むよ」阿修羅
「・・・そうですか・・・」
地蔵は声を落としている。




