表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿修羅様と光君  作者: 舞夢
71/419

第71話魔笛の指揮を始める

「うん、そこで指揮して欲しい」

「私、ここで聞いているから」

「少し腰が痛くてね」

祥子先生は、そのまま黒板の下の椅子に座ってしまった。


「いきなり・・・」

光は、指揮など何しろ中学生以来。

それも合唱を適当に指揮しただけ。


「仕方ないか・・・」

光は、どうしようもなかった。

そして、そのまま指揮台に進んだ。

譜面台の上には、モーツァルトの魔笛序曲が置いてある。


「知らない曲でもないし」

光は、子供の頃から音楽は何でも聞いてきた。

魔笛も好きな曲だった。

光は何のためらいもなく、指揮棒を振りおろした。

いや、後から考えると、振りおろしてしまったのである。


「うん、思った通りだ」

祥子は、演奏が進むにつれ、身体が熱くなることを感じている。

何しろ、テンポがちょうどいい。

速すぎず、遅すぎず、しかもタメを作る部分はしっかりと作る。

そのタメには、嫌らしさがない。

特に大指揮者で、リズムのタメを強調する場合もあるけれど、ワザとらしくて気持ちが悪く感じて来た。

しかし、光の指揮になると、それが爽やか。

また、音楽のいろいろなアクセントが、次第にクッキリとしてきている。


「すっごいなあ、これ、才能かなあ」

祥子は自分が指揮をする時、何度注意してもできなかったことを、光は一回の指揮で部員全体に浸透させている。

それが、うらやましいと思う。


「聞いていて、歯切れが良くて、楽しいな」

「それでいて聞かせる所、メロディを強調する部分は、しなやかに」

祥子は、ここで光の才能を確信した。


「何しろ光君自身が楽しそうに振っている」

「音楽部の生徒も楽しそうだ」

「のびのびと身体動かして弾いているもの」

「これなら観客も、乗っちゃうな」

祥子は、若い頃、とにかくコンクールで上位に入賞するための「ミスをしない演奏」「勝つ演奏」の練習に明け暮れた嫌な時期がある。

それに我慢が出来なくなって、今の生活を選んだけれど、他の部活の顧問とのトラブルもあり、ここでもまた我慢の生活であった。

しかし、この光の音楽を聴いているだけでも、幸せ。

「本当にモーツァルトを上手に鳴らしている」

そう思っていると演奏が終わった。


「ああ、ありがとう」

「うん、よかった」

祥子は満面の笑みで光に声をかけた。

光は少し恥ずかしそうに頭を下げた。


「多少修整したいところもありますので、それは個別に奏者に伝えます」

光は楽譜を見ながら祥子に伝えた。


「うん・・・任せる」

祥子は、今の演奏で十分だと思った。

しかし光は、まだ修整したいという。

ここは、任せるしかないと判断する。


「出来れば・・・本番の指揮も・・・」

魔笛以外には、モーツァルトのヴァイオリン第二番協奏曲、ソリストは祥子の卒業した音大の後輩を頼んだ。

メインは、ブラームスの交響曲第二番である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ