第68話ボクシング部の決着、阿修羅と地蔵の会話
光は、胸の前で手を合わせた後、手を離して刃物の固まりに向かって手を伸ばした。
「あっ・・・」
校長は目を疑った。
光の両手から青白い光が出た。
そして、その青白い光は、集められた刃物の固まりに向かい、それを全て消してしまったのである。
旧ボクシング部員は、全員が退学処分となった。
華奈の証言、光の家に届けられた手紙、そしてキャプテンの手に握られていたナイフが決定的な証拠とされ、学園の理事会において、全ての理事が異論なく承認されたのである。
警察とマスコミへの公表については、理事全員が反対をした。
あくまでも、「学園内で」処理することを優先したのである。
また、校長はけん責処分を受けることになった。
光は公園から華奈を家に送った後、春奈と家に戻った。
「まだ、やることがあるので」
光は、英語の勉強をするというのである。
そして、光は、そのまま自室に入った。
「ふぅっ・・・」
春奈は、一人になりため息をついた。
「まあ、あんな力を見せてしまって・・・」
校長の反応が心配になる。
手の平から靑白い光を出して、刃物を滅却した力である。
「あんなの、普通の人が見たら、どうなるの・・・」
「見せてもいいのかなあ」
「阿修羅も考えているとは思うけれど・・・校長も実は何かあるのかな」
「よくわからないなあ・・・」
その前に見せた、透明でオレンジ色の障壁については、気にしなかった。
見ていたのが春奈と華奈だけであったからである。
「華奈ちゃんも、血統は少し違うけれど同じ巫女の一族」
「まあ、大昔は同じだったけれど、後々を考えて分岐した」
小さい頃、圭子叔母さんに聞かされた言葉を思い出した。
しかし、ボクシング部員たちは、まるでそんなことは、わかっていない。
それだから不用意に拳を繰り出し、結界の壁に絡めとられているのである。
「どうなることやら・・・」
春奈は、本当に光の力が強くなり抑えられない場合は、春奈、光の叔母圭子、楓に加えて華奈を含めて抑えようと考えている。
さて、英語の勉強に飽きたのか、光は一時間ぐらいで自分のベッドに入ってしまった。
途端に、健やかな寝息をたてている。
「ふっ・・・」
眠りこける光を、阿修羅が見ている。
阿修羅がつぶやく。
「まあ、英語などと言う勉強も、そこそこに」
地蔵が阿修羅の隣に立った。
「ああ、テストとやらのお手伝いは、いかがしますか?」
阿修羅
「うーん・・・満点はわざとらしいな、どうでもいいところで」
地蔵は面白そうな顔になる。
「ほう・・・」
阿修羅
「まあ、英語なんというのは、田舎の言葉だな、単純極まりない」
地蔵
「まあ、阿修羅の生まれた国の言葉からすれば、獣人の言葉でしょう」
阿修羅は言葉を止めた。
「まあ、今はその生まれた国が・・・」
何か仔細があるらしい。
地蔵も、問いただすことはしなかった。




