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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第60話甲子園至上主義の監督の暴言

「はい・・・」

祥子先生が扉を開けると、赤ら顔の男性教師が入って来た。

頭には野球帽、野球部のユニフォームを着た野球部の顧問渡辺である。


「ああ、祥子先生、あのお願いですが」

野球部顧問は、音楽室に入るなり、祥子に「あのお願い」を尋ねた。

しかし、他の部の部室に入るのに、何の挨拶も礼儀も無い。


「先生・・・あの話は・・・ちょっと・・・」

祥子先生は、難しい顔をしている。

どうやら、野球部顧問の「あのお願い」は、祥子先生の賛同を得られないようである。


野球部顧問渡辺は粘る。

「うーん・・・そうは言われましてもね、せっかく野球をずっと練習してきて、うちの学校だけ音楽部の応援が無いとね」


祥子先生は、反論する。

「そうは言われましても、音楽部はもうすぐコンサートがあって、その練習をずっとやってきました」

「もし野球部が勝ち進んだ場合、音楽部のコンサート当日と重なりますし、あの子たちの練習が無になるんです」

「それに野球部だけ、どうして他の部の都合を考えないのですか?」

「他の部でこんなことを、何度も言ってくるところはありませんよ」

「みんな他の部の先生は良識を持って、音楽部のコンサートに期待してくれています」

「それに、この学校の音楽部は人員も少ないですし、とても野球の応援に割り当てることは出来ません」

祥子先生も、後には引かない。


しかし野球部顧問渡辺は、ますますその顔を赤くして粘る。

「祥子先生は、我が校の名誉を考えないのですか?」

「全て他の学校が応援にブラスバンドを出すのに、この学校だけが音楽応援が無いなんて、協調精神が無さすぎる」

「今年は特に甲子園まで目指せるような、好投手がいるんです」


野球部顧問渡辺は、学生時代から野球一辺倒である。

甲子園出場は経験していないので、甲子園出場には、相当の憧れがある。

そのため、彼にとって高校の部活動においては野球そして甲子園出場が至上のこととなり、他の部の活動など、無意味とさえ考えている。

出来れば運動神経に優れた全ての選手を野球部に入れたい、いや学校の名誉のためにも入れるべきとさえ、考えている。

そのため、野球部顧問渡辺も簡単には引かない。


「先ほど申し上げましたが、甲子園も何も、それは野球部の話です」

「確かにマスコミの注目は、他の部以上にありますが、音楽部には音楽部の都合があります」

「特に炎天下の中で楽器も痛むんです、それは承知ですか」

祥子先生は、野球部顧問の横暴な要求にあきれている。


しかし、野球部顧問は何が何でも野球が第一、甲子園出場が至上として生きており、他人の都合など全く考えない。

「うるさいなあ・・・お前らの楽器なんて野球に関係ないぞ!」

「楽器なんて、単なるお囃子じゃねえか!」

野球部顧問は、もともと短気である。

特に高校野球至上主義に凝り固まり、炎天下の中、日蔭もない野球場で応援をする音楽部など「お囃子」としか認識が無い。

つい、本音を口走ってしまった。


これには、祥子先生も激怒した。

「これは聞き捨てなりません」

「この言葉で、私がこの学校にいる限り、今後、一切野球部には協力いたしません」

「それに今の言葉は、しっかりと校長に報告いたします」

「さあ、お帰りください!」

矢継早に野球部顧問に反駁し、音楽室から追い出してしまった。


「うるせえ、このバカ女!」

野球部顧問は、廊下に唾を吐き、帰って行った。

もともとの赤ら顔がますます真っ赤になっている。

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