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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第59話何も覚えていない光

「どうやら、奈良の知り合いらしいんだ」

「春奈先生とも、僕の従妹とも知り合いって言っていた」

「華奈さんのお母さんも僕を知っているらしいんだけど、よく覚えていなくて・・・」

つまり、よくわかっていない、覚えていないのは、光だけと素直に白状してしまう。


「あのね・・・」

またしても由紀は拍子抜けである。

「本当に光君って・・・」

由紀は光が気になって仕方がない。

ボクシング部や柔道部とのことも、本当に心配した。

由香利先輩も時々、教室に覗きに来るし、その上、ピカピカの美少女華奈である。

華奈が古くからの知り合いと言うことが気にかかるが、光はおそらく何も考えていない。

その無神経さが、どうにも不安なのである。


「何か、心配でね」

「心配で夜も眠れないんだから」

由紀は光の顔を見る。

しかし、光は英語の参考書に没頭している。

赤い顔をして光を見つめる由紀のことなど、まったく関心がない。



今日の授業は午前中で終わり。

光のところに音楽部顧問の祥子先生がやって来た。

祥子先生は、少し話をしたいことがあると言う。

光は祥子先生に連れられて音楽部の部室に入った。


「光君、いろいろ大変だね」

祥子先生は、ボクシング部や柔道部の件を言っているようだ。

「本当に柔道部の前顧問の時はありがとう、助かりました」

祥子先生は、冷たいジャスミン茶を出してくれた。

かなり夏の日差しが強く、暑い。

冷えたジャスミン茶が、光の身体に精気を戻していく。


「それでね、本当に音楽部に入ってくれるの?」

「ああ、君の体調が回復してからでもいいけれど」

祥子先生は、まだ顔が少し腫れている光を心配そうに見る。


「あ・・・身体は大丈夫です」

「英語の試験が終わったら少ししたら顔を出そうかと考えています」

光は、祥子先生に頭を下げた。


「そう、うれしいなあ・・・」

「みんな喜ぶ」

「私も光君となら、音楽一緒にやりたい」

祥子先生は本当にうれしそうに笑う。

少しホッとした顔になっている。


「はい、何でも好きです」

「バッハもベートーヴェンもモーツァルト、ショパン、シューマン・・・ラフマニノフもいいな」

「ああ、ジャズも・・・」

光もうれしそうな顔になる。

少なくとも、ボクシングや柔道の時の顔ではない。


「本当にボクシングとか柔道は、面倒なだけで・・・」

「相手を痛めつけて何が面白いのか、わかりません」

光は、本当に嫌そうな顔をする。

「そうよね、せっかくの時間なんだから、楽しいことに使いたいよね」

祥子も同調する。


「光君とは部活の練習もそうだけど、クラシックのアンサンブルとか、ジャズのセッションもいいな、どう?そういうの?」

祥子は個人的なセッションも希望しているようである。

「あ・・・はい。そういうのは大好きです。是非・・・」

光は笑顔で応えた。

しばらく、祥子先生と光の音楽談義が進んでいた。


「コンコン」

そんな時、音楽部の部室がノックされた。

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