第58話幼馴染の華奈を忘れている光
翌朝、光と春奈は一緒に家を出た。
すると、驚くことに、家の前に、華奈が立って待っている。
「あ!おはようございます」
「春奈先生!光さん!」
華奈は、超ニッコリ、そしてぴょこんと頭を下げる。
「え?華奈ちゃん?・・・え?奈良町の?」
春奈は、そこでびっくりである。
「はい!華奈です、春奈さん、お久しぶり!」
華奈は、そう言ってにっこりと笑う。
どうやら、二人は古い知り合いのようである。
しかし光にはさっぱり状況がわからない。
ポカンとして見ているだけである。
「へぇ・・・こっちに来ていたんだ」
「奈良町が揃っちゃったねえ」
春奈は、本当に嬉しそうな顔になる。
「奈良町が揃ったって?」
これには光も質問をする。
「ああ、光君のお父さんはもともと奈良町でしょ、私も同じ」
「華奈ちゃんのご両親もそうだよ、奈良町」みゆき
「うん、お父さんがこっちの大学の先生になったから、七月から一緒に越して来たんです」
「お母さんも、春奈先生や光さんに逢いたがっています」
「楓ちゃんが来たら、パーティーしたいなと」
華奈から光の関知しないいろんな話が飛び出してくる。
華奈の母にも知られていて、楓がここに来ることまで、華奈は知っている。
「いったい、どういう関係なんだ」
光にはさっぱりわからない。
ただ、何となく、華奈の笑顔を小さい頃に見たような気がしてきた。
「・・・え・・・っと華奈ちゃん・・・華奈ちゃん・・・ああ・・・そう言えば・・・」
「うーん・・・あの子かなあ・・・」
「一緒に遊んだような・・・うーん・・・何だっけ・・・」
「まあいいや、本人に聞くのが一番」
それを聞こうとするけれど、春奈と華奈はどんどん歩いていく。
二人の話も駅周辺のパン屋とかケーキ屋の話で盛り上がってしまっている。
光の疑問など全く考慮にない。
「まあ、いいや、この人たちに付き合ってもしょうがない」
光は電車に乗り込むと、英語の参考書を広げた。
昨晩は、ウカツにも勉強をしないで寝てしまった。
何しろ、英語のテストは明日、光も多少は焦っている。
光と春奈、華奈の三人は一緒に校内に入った。
周囲は驚いた顔が多い。
春奈先生と光だけなら、教師と生徒の一定の違いがあり、まだ容認が出来る。
しかし、この学園でもピカイチの美少女との評判が高い華奈が並んで歩くと、事態は異なる。
まず女子学生たちの目がきつい、どちらかというと華奈を見る目がきつい。
男子学生は羨望の目で光を見る。
しかし、相変わらず光はボンヤリと歩いているだけである。
そんな状態で光は自分の教室に入った。
席につくなり、隣の由紀に話しかけられる。
「光君、華奈ちゃんとはどういう関係?」
話しかけられると言うよりは、尋問である。
語調が少々きつい。
「えっと・・・」
ここでまた光は口ごもる。
どういう関係と聞かれても光自身がよくわかっていない。




