第56話超美少女華奈の登場
光は、柔道場を出て帰路につく。
光としては、まず英語のテストが近いので、一応勉強をしなければならない。
ただ、今までと違い早く歩くことができない。
何しろ火傷に近い日焼けで肌が痛くてたまらない。
さて、ゆっくりと言うのか、あるいはいつもの通りヨタヨタと駅までの道を歩く光の横に、一人の女子学生が並んだ。
そして、いきなり光に話しかけてきた。
「舞夢さん、華奈です!」
「今月から、この学園の一年生に転校して来ました」
「それから、音楽部に入りました!」
女子学生は、いきなり「超元気に」自己紹介をしてきた。
確かに音楽部らしい、ヴァイオリンのケースを持っている。
「ああ・・・はい・・・初めまして、光です・・・」
光の対応は、とても二年生の先輩とは思えない、ドギマギした応え方。
そのドギマギも当然、華奈は肌も真っ白、輝いている。
とにかく、ピカピカに輝いている超美少女である。
「あっ・・・初めてじゃないけれど、超お久だけど・・・ありがとうございます!」
「音楽部に入ってくれるそうで、とてもうれしい!」
華奈は、超元気に本当にうれしそうに笑っている。
その笑顔だけで、周囲も明るくなるようだ。
普段はおっとりとした光も、珍しく笑顔になる。
「あっ・・・いや入ろうかなあ程度で、決めたわけじゃないよ」
光は、あわてて答えた。
ただ、やはりボンヤリ頭の光である。
華奈の「超お久発言」は、聞き流してしまっているし、さっぱりわかっていない。
しかし、そんな感じで答えながらも、華奈のあまりの可愛らしさに、どうしても笑顔になってしまう。
「それにしても、ボクシング部といい、柔道部といい・・・すごいですね、気になって見ていました」
華奈は光をじっと見つめてくる。
「ああ、恥ずかしいところ見せてしまって」
光は照れた顔である。
何しろ華奈が「超可愛い」ので、ウブな光では照れてしまうのである。
そんな状態で駅に着いた。
いつもの渋谷の雑踏になる。
しかし華奈は光の隣をずっと歩いている。
「あれ、華奈さん、家は?」
光は首をかしげた。
何しろ今まで、一緒に帰った学生などいない。
「ああ、心配はいりません」
華奈は、ごく普通に光の隣を歩いているのである。
「心配がいらないって?」
光には、どうにも華奈のいう意味がわからないが、そのまま井の頭線に乗り込んだ。
しかし、夕方で少し混んでいてとても座れる状態ではない。
結局並んでつり革を握ることになった。
「あ・・・はい、同じ駅です」
それでも光の最寄りの駅に近づくと、華奈がびっくりするようなことを言う。
そして、華奈は顔を赤らめている。
「え?見たことないなあ」
光は応えるが、華奈は笑っている。
「やだ、もう!ほとんど朝は毎日一緒です!光さんが気づかないだけ!」
華奈は、ますます真っ赤になっている。




