第44話学校を休んだ光とその原因
春奈は、奈良に住む光と同い年の従妹の楓と、頻繁に連絡を取り合っている。
ボクシング部や柔道部との一件は、楓も既に承知している。
「そうかあ・・・何か起きると思っていたけれど」
「でも、まだその程度じゃ、大丈夫かな」
楓も、現状ではそれ程のリスクを感じていない様子である。
「うん、女の子たちのことは、特に怪我をするようなこともないし」楓
「男だって、怪我させられる人もいないかも」春奈
「心配なのは、阿修羅のリミッターが外れちゃった時かな」楓
春奈と楓は不思議な会話を続けていた。
しかし、光は月曜日に学校を休むことになった。
理由は「熱中症による体調の悪さ」である。
何しろ炎天下の運動会で、かなり日焼けをしてしまった。
皮膚が痛くて下着を替えるのも痛い。
それに強い「熱中症」状態である。
とにかく頭がフラフラする。
もともとフラフラしている光が、より一層ひどい状況になってしまった。
それで光は、学校に休む連絡をしたのである。
「今日こそは」と待ち構えていた、柔道部新顧問山下と見に来ることにしていた坂口は、またしても拍子抜けを味わうことになった。
春奈は光が休んだことを担任に聞き、光の家を訪ねた。
「お目付け役」として心配であったのである。
春奈は、奈良の圭子叔母さんから「光君には言っておくから」ということで、既に鍵を預かっているので、どんどん家の中に入った。
「うーん・・・」
予想通り光は、ベッドに寝ていた。
そして苦しそうにうめいている。
「光君、大丈夫?」
春奈は、そっと声をかけた。
「ああ、春奈先生、ごめんなさい、圭子叔母さんから鍵の話は聞いています」
光は必死に声を出す。
光の連絡通り、顔は真っ赤。
掛け布団を捲り、腕を見ても確かに真っ赤に腫れ上がっている。
「あのね、光君、日焼け止め使った?」
光は、ぼんやりと自分を見つめる光に尋ねた。
「いや、そんなの持っていない」
「ずっと半袖、半ズボンで」
炎天下が大の苦手の光が、なんという無神経なことか、春奈は呆れてしまう。
「帽子ぐらいはかぶったの?」
念のための質問である。
春奈は、まさか帽子はかぶったと思っていた。
「いや・・・かぶろうと思ったんだけど玄関に忘れました」
光から、力が抜けるような答えが返ってきた。
「はぁ・・・」
あまりの、がっかりする答えに、春奈は力が抜けてしまった。
もう質問する気力もない。
そして、そこまで答えてまた眠ってしまった光を呆れて見つめている。
「まあ、それでもせっかく来たのだから・・・」
春奈は光の腕と脚を触ってみることにした。
あくまでも「診察」の目的である。
「うーん、それでも前よりは筋力がついたような気がする」
「脚は・・・細いけれど案外筋肉ある。うん、ヨタヨタしている割には、逃げ足だけは速いのはこれかなあ」
「それにしても、これは日焼けじゃあないよ、火傷だ」
光の顔、腕、脚は、真っ赤に膨れ上がっているのである。




