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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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桜吹雪

「・・・残念だけど・・・まだいいか」

春奈は圭子の言葉で納得してしまった。

圭子がお嫁さんの顔が見えないと言う以上、仕方がないし、今の時点では光に何も考えがないことは、来る前からわかっていた。


その春奈の「納得」は、他の候補者巫女も、実は同じだった。

少々の落胆と不思議な安堵感を伴い、「今のところは決まらない」、それで納得してしまった。


そして、話題はケーキに切り替わっている。


「このサントノレって、桜の風味」由香利

「そうだね、ほのかに」由紀

「奈良公園で史叔父さんと菜穂子叔母さんと光君が植えた桜の花びらからエキスを取ったの」

楓が解説した。


「ふーん、それでかあ・・・菜穂子さんが考えそうなことだな」美紀

「絶対に長生きするよ、その桜」美智子

「光君の孫までかなあ」ニケ

「そうだねえ、その子も見たいねえ」ナタリー

「いやー・・・その前の前っていうか、入り口にもいないよ、光君も候補者も」圭子

「どうして、我が娘たちは、ああオクテなのかなあ、まどろっこしい」美紀

「でも見ていて可愛いや、みんなウブでさ」圭子

「阿修羅が孫までと言ったんだから、光君の命は保障されたんだよね」ナタリー

「そうなるとさ、のんびり、レースを見られるなあ」ニケ

「お嫁さんに二人産んでもらって、温泉託すかなあ」奈津美

「へえ、そうすると毎年年末年始が楽しみだ」ナタリー

母親世代の巫女が、のん気な話を続ける中、候補者巫女たちはようやく落ち着きを取り戻したようだ。


「私は男の子だけじゃなくて、女の子も欲しい」春奈

「結婚式は、ここのホテルにするかなあ、料理も美味しい」ルシェール

「新婚旅行は地中海クルーズだ」ソフィー

「伊勢の格式と伝統を踏まえて、古式ゆかしきかなあ」由香利

「とにかく、子だくさんにしたい、そのほうが楽しい」由紀

「もう一度、心を入れ替えねばいけない、今のままでは素材だけの生料理だ、これでは選ばれたとしても、光さんに迷惑がかかる」華奈

様々、拍子抜けしながらも、落ちつきを取り戻しているけれど、考えることは「自分がお嫁さんに決定後の光とのこと」だけである。


しかし光は全く別のことを考えていた。


「まあ、暗闇の神は退治したけれど・・・」

「細かな邪鬼、妬みからの邪鬼が多すぎる」

「ゴウマンな輩が、弱いものを虐げている姿が目に付くようになった」

「阿修羅君も身体にいる以上は、時々出してあげないと・・・」

「金剛力士たちからもお願いされているし」

「受験も何とかなりそうだし、音楽しながら邪鬼退治をするかなあ」

そんなことを考えていた光の目が、突然輝いた。



光が窓の外を眺めると、春風に乗って桜の花びらが、まるで桜吹雪のように、舞い上がっている。

そして、光が窓際に立つと、その光の肩に温かみのある手がそっと置かれた。


光が「え?」と思って振り返ると、地蔵菩薩が立っている。

その地蔵菩薩は、少し、申し訳無さそうな顔をしている。


地蔵菩薩から光に声がかかった。

「光君、いろいろご苦労さん」

そこまでは、良かった。


光も素直に

「はい、ご助力ありがとうございます」

と頭を下げるけれど、地蔵菩薩は申し訳なさそうな顔のまま。


地蔵菩薩は、少々苦笑いを浮かべ、言葉を続けた。


「実はね、金剛力士と八部衆の他にもね・・・四天王、つまり広目天、多聞天、持国天、増長天も出たいって言っているんですよ、ものすごいですよ、何で出してくれなかったとか、あのゴツい顔して大騒ぎで・・・何とか活躍の場所を作らないと、私もねえ・・・せっつかれているんです・・・」


光は、ますます「え?」という顔で地蔵菩薩を見ると、その地蔵菩薩はクスッと笑って窓を指さした。


光が

「はい・・・」

と窓の外を見ると、ますます驚いた。



桜吹雪の中、母が宙に浮かび、光に笑顔で手を振っている。


そして、母菜穂子の後ろで、金剛力士二体、八部衆、四天王までが、光に笑顔で手を振っているのである。



                                                                                                                                         (完)



「阿修羅様と光君」ご愛読ありがとうございました。

尚、光が高校三年生となる続編は、「阿修羅様と光君 聖と闇の呪術」となります。

ますます、パワーアップした光と、多国籍化とともに増加する巫女たち、金剛力士、八部衆、四天王も登場します。

是非、ご期待下さい。


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