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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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え?父の帰宅!

無粋な光も、ソフィーの焦れた表情にようやく気付いたらしい。

「あのね、恥ずかしいんだけどね」

本当に小声である。


「え?なあに?」

ソフィーとしても慎重に聞かざる負えない。


「言えないんだけど」

光の身体が突然傾いた。

そしてソフィーの膝に頭を乗せてしまった。


「わっ!もう!」

ますますソフィーの顔は赤くなった。

「えへへ・・・まあ言いづらいか・・・」

ソフィーは寸時に眠りに落ちた光の頭をなで続けている。




光とソフィーが家に戻ると、巫女たち全員が心配そうな顔で出迎えた。

ただ、心配の対象は光自身の表情だった。

母菜穂子の死以来、光の心を閉じ込めて来た事件の一つの要素、暴走運転の運転手にケリをつけた、そのことが光にどれほど影響を与えるのか、本当に不安になっている。


「お疲れさま、光君」

圭子は光を抱き寄せた。


「ありがとう、圭子叔母さん、いろいろと・・・」

光は素直に頭を下げる。

しかし、それほど表情自体に変化は感じられない。

やはり光にとって、運転手への始末以上に母親の死とその原因である自分の飛び出しが心の傷として、消し去ることが出来ないらしい。


「いやいや、全てじゃないけれどね、一つは解決だね」

「まだまだ・・・でも、一つ一つね、少しずつでいいよ」

圭子も光の心の傷の深さを把握している、やさしく光の背中をなでている。


「うん、ありがとう、よくわかっているんだけどね・・・」

光は唇を噛んだ。


「そうだね、あんな低レベルの男を断罪したとして、菜穂子さんが生き返るわけはない」

「でもね、光君、前に進もうよ、そうしないと菜穂子さんが怒るよ、きっと」

圭子は光の背中をなで続け、光はうつむいていた。


「それにさ、もう泣いていられないよ、実はねえ・・・」

ニケから突然声がかけられた。


圭子も笑って光を抱きしめる腕を離した。


「え?」

光が驚いてニケを見ると玄関のチャイムが鳴った。


「私が出る!」

美紀が顔を真っ赤にして玄関を開けている。

楓も華奈も玄関に走っていく。


「ふふん、登場だよ!光君!」

美智子もうれしそうな顔になっている。


「え?何?」

光はさっぱりわからない。

しかし、次の瞬間、光の表情が一変した。


「おーーい!光!」

「ちょっとだけ帰ったぞ!」

いきなり、光の父、史の力強い声が玄関から響いて来たのである。


「わーい!史叔父さん!おっひさー」

「相変わらずゴッツイねえ!」

「でも、そのゴッツさがカッコいい!」

珍しく、楓の大声三連発である。


華奈も負けてはいない。

「史叔父さん、華奈です、お久しぶりです」

「今年から高校生になりました」

「今後も光さんと私のことをよろしくお願いします」

華奈にしては、キチンと挨拶をしているのだけれど、特に最後の言葉に問題あるようだ。

美紀は、華奈のお尻を叩き、楓は華奈の脚を蹴飛ばした。

リビングで待つ春奈、ルシェール、ソフィー、由香利、由紀は顔をしかめている。


「まあまあ、みんな大きくなった」

史は大声で笑い、そのままリビングに入って来た。


「父さん!」

光の目が本当に丸くなった。

しばらく会っていなかったし、全くあてにしていなかった父が目の前に立っている。


「おお、光、相変わらず細いなあ・・・とその前にだ・・・」

史は一旦光から眼をそらした。

そしてリビングにいる全員に頭を下げた。

「本当に、春奈さんをはじめとして、みんなに支えられて光がここまでやって来られた」

「父親として、心から礼を言います」力強く心のこもった礼である。


「ああ、私たちもしっかり面倒を見ることが出来なくてね、ごめんね」

「でも、史さんに頭を下げられたら、返す言葉がないよ、頭を上げて」

圭子は史の手を握った。

圭子は泣き出している。

その圭子につられて、美紀、美智子、ニケも泣き出してしまった。

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