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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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光vs暴走トラック運転手(2)凄まじい断罪

「うぉ!あぶねえ!」

いきなり運転手の目の前に、大型トラックが暴走してくる。

しかも運転手は自分の赤ら顔である。


「うわっ!」

「うわっ!」

・・・・・・・

何度も自分の運転する暴走トラックが自分に向かってくる。

そして何度も轢かれ、目を覚ますとまた暴走トラックに轢かれるのである。


「止めてくれ!」

「恐ろしい!止めてくれ!」

ついに運転手は、半狂乱となった。

机をドンドンとたたき、全身を硬直させる。

既に数十回も轢かれたころ、光が声をかけた。


「いや、まだまだです」

轢かれる運転手の目に突然自分の母親が写った。

そのしゃがみこむ母親を自分が何度も何度も轢き殺す。

その次にしゃがみこむ母親と子供の頃の自分が何度も、赤ら顔の自分によって轢き殺された。

運転手は既に机をたたくどころではない。

全身を硬直させ痙攣を繰り返しているだけになった。


「あなたには、一生その夢を見てもらいます」

「その目も開くことはありません」

「それが嫌だったら、反省してください」

「それでも許されるとは限りません」

「罪がなければ、許されますが・・・」

ハンナリとした光の声は続いた。


「わかった、反省する!」

「とにかく反省するから」

暴走トラックに轢かれる間隔が速まっているのだろう。

全身硬直の頻度が増している。


「そうですか、それでは罪があるかないか、反省したかしないか・・・罪が無くて反省すれば痛みもないけれど・・・」

光の合わせた手から、一粒の火の玉が浮かんだ。

火の玉はそのまま、恐怖にあえぐ運転手の口の中に吸い込まれていく。


「うわーーー!」

「グギャーーー!」

運転手が、体内に飛び込んだ火の玉の凄まじい熱さと痛みで、のたうち回りはじめるのを見て、光は合掌を解いた。

そして踵を返して、取調室を出た。

慌ててソフィーが後を追う。




警察署を出ても光はしばらく無言だった。

それでも、ようやくソフィーが声をかけた。


「光君、よく我慢したね」

ソフィーとしては光が犯罪者になることだけは避けたかった。

しかし、母菜穂子を結果として死に追いやり、何も反省をしていない運転手である。

光が本当に怒ったら、阿修羅も何か動きを見せる、その場合光とソフィーの眼前での運転手の死亡とて不思議はない、ソフィーとしても止めることは不可能であると思っていた。


「うん、あんなの滅ぼしたって意味がない」

「それだけはダメって、昨日父さんから電話があったしさ、母さんも夢に出てきた」

「阿修羅君からは、熔鉱の浄めを使ってくれって言われていたし、地蔵さんもそれでいいって、反省しようがしまいが、あいつが死ぬまで幻覚をも見続けることになる」

光は、そう言って少し寂しそうな笑顔をソフィーに見せた。


「そう・・・父さんも母さんも、阿修羅も地蔵さんも出て来たんだ」

「少しは楽になった?今すぐじゃなくてもいいけどさ」

ソフィーは自分の言っていることがよくわからない。

ソフィー自身が、光の寂しそうな笑顔で、動揺している。


「大丈夫だよ、ソフィー、それよりさ」

光は少し恥ずかしそうな顔になった。


「え?それよりって何?」

ソフィーは光の顔を覗き込んだ。


「いや、恥ずかしいし言えないや、とにかく帰ろう」

光は顔を真っ赤にして政府の車に乗り込んでしまう。

しかし、それではソフィーの気持ちが収まらない。

車の中で、光を追求することになる。


「あのね、もう四月からは高校三年生なの」

「言い出したことは、恥ずかしくても言いなさい」

「言いにくいことでも、結界を張って読ませないようにするからさ」

ソフィーは目を光らせた。


その光で結界を張っているようである。

ソフィーは内心、光が何か告白をすると考えている。

上手くいけば

「ソフィーはきれいだなあ」とか

「また二人きりでデートしよう」とか

「いろいろ教えてください」など、光が恥ずかしがりそうな告白を、様々想定し、答えを内心準備している。

ただ、最後の「いろいろ教えて」の具体的な応えは、ソフィー自身が赤面してしまう。

車が進むにつれて、ソフィーのドキドキ感は強まるし、「いろいろ教えてあげる」の口調を何度も心の中で練習するほどになっている。



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