表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿修羅様と光君  作者: 舞夢
412/419

光vs暴走トラック運転手(1)

運送会社は、国税捜査に加えて、何しろ運送受注が全く入らない状態、そのうえ銀行からも融資を断られる、その後の反社会的勢力との密接な関係、運送業務における違法運転、業務管理の杜撰さが明らかにされることが確実で、壊滅的な打撃を受けることになりそうである。


運送会社の支援を受けていた議員も、急きょ国会質問が取りやめとなった。

倉庫内の不穏な状況や、お抱え運転手の強度の酒気帯び運転と無免許状態、それを注意していなかった議員の失態、おまけに未遂となったものの公安調査官への買収行為が政権当局は当然ながら、所属政党内部でも問題とされたのである。


「圭子叔母さんとみんな、様々な協力をありがとう」

光は圭子や他の巫女たちに頭を下げた。


「さて、運送会社も議員も、当然報いを受けるんだけど」

光が立ち上がった。

そして、ソフィーがリビングに入って来た。


「光君、彼は拘束してあるよ」

ソフィーの言葉はそれだけだった。

光は頷き、政府お迎えの車に乗り込んだ。

見守る巫女たちが何も言えない程、厳しい表情になっている。


光とソフィーの車が出た後、華奈が不安の声をあげた。

「ねえ、どうしよう、光さん、見たこともないほど怒り顔だよ」

「もし阿修羅が出現したら、殺しちゃうよ」

他の巫女も不安らしく、圭子の顔を見た。


「大丈夫さ、みんな・・・」

「光君はね、史さんと菜穂子さんの子供だよ」

「そんな罪を犯すような馬鹿なことをするような子供じゃない」

圭子は厳しい顔ながらはっきりと言い切った。



光はソフィーと一緒に、警察署の取調室に出向き、その運転手の前に立った。

運転手は怪訝そうな顔をして、光とソフィーを見ている。


「それはな!無免許で酒気帯びだから、悪いのはわかるぞ」

「だけど、何で関係のない、こんな青っ白いガキが出て来るんだ!」

「先生に言って、問題にするぞ!」

運転手は、未だ酒が抜けないのか、顔を真っ赤にしてわめき続ける。


「ふーん?関係ないっていうのかい!」

「あんたのためにねえ!この子はねえ!」

ソフィーは顔を真っ赤にしてタンカを切り始めた。

しかし光はソフィーを目で制止した。


そして一旦両手を高く掲げ、ゆっくりと胸の前で合わせた。

「う・・・阿修羅の合掌の別バージョン!」

ソフィーがつぶやいた瞬間、運転手の目が閉じ顔がこわばった。



運転手の閉じた目に、杉並の住宅街が映っている。

運転するトラックのカセットからはK二郎の演歌が、ガンガンに流れている。


「うーーん、これこそ男の歌だ」

「クラシックとか腰振りポップス?そんなの歌じゃねえ!」

「ロックにしろジャズなんて毛唐の音楽、わかんねえし、やかましいだけだ」

運転手はビールを口にした。

「酒気帯びも何も、免許なんか何もないっての、とっくに切れたまま」

「それでも先生がついているし、ワイロもタップリしている会社も強い」

「なーにが警察?馬鹿馬鹿しい!」

「ちょっと先生の名前出せば、尻尾振ってごめんなさいじゃねえか」

運転手は、ビールを再び口に含み、住宅街の角を曲がった。


「うぉっ!何だ?あのガキ!」

運転手の前に小学校五年生ぐらいの子供が突然飛び出してきた。

「やべ!間に合わねえ!」

「いいや、このままスピード出して轢いちまえ!」

「どうせこんなボロトラック、傷とヘコミが多少増えたってわかりゃしねえって」

運転手は、ブレーキをかけることもなく、逆にアクセルを踏みこんだ。


「うおっ!あぶねえ!」

「何で止まるんだ!」

突然、運転するトラックが何かの壁にでもぶつかったかのように傾いて停まった。


「あぶねえじゃねえか!」

運転手が渋々トラックから降りると、小学生の子供が震えてしゃがみこみ、細身の女性が真っ直ぐに腕を伸ばしている。


その後、その細見の女が文句を言ったが、相手にしなかった。

「馬鹿馬鹿しい!酒がまずくなる」

運転手は再びトラックに乗り込んだ。

隣には運送会社の社長が、へらへらと笑って座っている。


その後、救急車両と接触した。

救急車両は急いでいたようだが、K二郎の演歌で聞こえなかった。

怒り顔の救急車両の運転手には、聞こえなかったと言い張り、駆けつけた警察官には議員の名刺を出した。

そこで、警察官は何も言わずその場を去って行った。


「ふん、馬鹿馬鹿しい!あの時のガキがお前って言うのかい!」

「無事だったからいいじゃねえか!」

運転手は目を閉じたまま、再び毒づいた。

しかし、その威勢はすぐに、恐怖と変わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ