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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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またしても楓の大暴言 官邸での慰労会

官邸警護の役人が、車のドアを開けると、さっそく待ち構えたように楓の大声が聞こえて来た。


「おはよう!一つのベッドで眠りながら、結局何も出来なかった春奈さんと、正月以来何も進展がない、ノロマの候補者諸君!」

「だいたい何さ、どうして都内組が遅れて来る?そういうの怠慢って言うの!」

「ああ、光君がノロマなのは昔から、生まれた時からだから、しょうがないの」

「でもね、あなたたち普通の人が光君に合わせちゃダメさ、そこの理解が全く不足している、もうしょうがないから、私が光君のお嫁さんを選んであげる」

「だから、お嫁さんになりたかったら、私の指示に完全服従しなさい」

官邸前で光を出迎える奈良の巫女たち、由紀、由香利が口をポカンと開けてしまうほど、威勢のいいタンカである。


「そんなこと言ってもさ、何?あの体型」春奈

「ほんと、超巨大化している、それも下半身だけ」ルシェール

「首相と官房長官からのお煎餅、ほとんど一人で食べちゃったんだって、圭子さん嘆いていたよ」美紀

「時代が変わって、いとこじゃなくても候補者にもなれない、あんな性格だと」ソフィー

「だいたい光さんのお嫁さんは、この華奈って決まっているんだから、楓ちゃんは関係ない」華奈も同様に反発したけれど、結局お尻を叩かれている。


全員で官邸に入ると、官房長官が笑顔で出迎えた。

どうやら玄関前のバトルを聞いていたらしい。


「とにかくお疲れさまでした、これからも大変ですね」

官房長官は、意味ありげに光にねぎらいの言葉をかけた。

光も官房長官の言葉の意味がわかったのか、深く頷いている。


特別対策室に入ると、首相以下全閣僚が立って待っていた。

まず、首相が深々と礼をすると、全閣僚もそれにならった。

首相が顔を上げ、挨拶となった。


「本当に光様、そして巫女様たち、国際テロ集団の攻撃から我が国、そして世界をお救いいただき、政府の長として、心からお礼申し上げます」

「本当に不安となった、国際テロ集団には、突然内部分裂が発生した模様で、小さな戦闘などはありますが、当面大事に発展することない模様です」

「本日は、お礼といたしまして、ささやかな宴席を設けましたので、ご存分にお寛ぎください」

首相の言葉通り、特別対策室の別室には、特別料理が用意されていた。

和食、中華、フレンチ、イタリアン、変わったところで中近東の料理などがふんだんに給仕される。


「ふう、これだけいろいろあると、何を選んでいいのかわからないや」

光はメニューページだけでも、分厚くなっていることから、どうにもオーダーが進まない。

光の隣には、当然のごとく楓がガッシリと座り、優柔不断な光にかわって様々料理をオーダーしてあげている。


「ほら、お肉でしょ、こんな分厚いステーキ、なかなか春奈さんじゃあ焼かないよ」

「ねえ、ルシェールの上をいく、トロトロオムレツさ、美味しいねえ」

「このギリシャ風魚介類の煮込みって、ソフィーの腕じゃマダマダだね」

「それに、中華のデザートだよね、光君が年末にグズグズして食べられなかったでしょ」

楓は様々な料理に様々なことを言いながら、本当に世話女房風に光の皿に取り分けている。


「何さ、自分じゃ、柿の葉寿司ひとつ、まともに出来ないくせに」圭子

「なかなか春奈さんじゃって何さ、牛肉食べる前に自分のお肉何とかしなさい」春奈

「光君に取り分けながら結局自分のほうが余計に食べている、あれだから太る」ルシェール

「ネットを通じて楓ちゃんに勉強教えようと思ったけど、もうやだ、泣いても教えてあげない」ソフィー

「どうせ、私はどの料理も出来ないけれど、言い過ぎだと思う」華奈

楓に「口撃」された巫女たちは様々反発しながらも、さすが首相以下全閣僚がいるなか、言い争いなどは出来ない。


「まあ、なんだかんだと言っても、光君は私のものになるのさ、明日から光君と毎日連弾するかな、そう思うと美味しい料理がますます美味しくなる」由香利

「春奈さんが光君と同じベッドで一夜を過ごしたくらいで動揺するなんて、あの巫女たちも甘ちゃんだ、私なんか素肌で抱き合ったしさ、実はあれはリアルなんだ、後で夢とか、過去世風にごまかしたけれど」由紀

由香利はともかく、由紀は腹立ちまぎれについ、結界を自ら破り「本当のこと」を思い出してしまった。

そんな光にとってはどうでもいい状態がしばらく続いた。



結局巫女たちが美味追及に夢中となる中、光とソフィーは別室に呼ばれた。

別室では首相、官房長官、法務大臣が光とソフィーを待っていた。


「はい、お食事へのご招待ありがとうございます」

光は、ようやく話をすることが出来た。

何しろ楓の料理の取り分け方が速いので、ただ料理を食べて飲み込んでいる状態しかなかったのである。


「いえいえ、光様がなされたことから言えば、ささやか過ぎて」

首相は、再び頭を下げた。

そして言葉を続けた。

「特別調査官としてのお働きも、このまま、思い通りになさってください」

「政府としても、本当に助かっています」

首相の言葉で、官房長官と法務大臣が再び頭を下げた。

どうやら、光は特別調査官の職務からは解放されないらしい。


「わかりました、まだまだ感じることはあるので」

光としては、はっきりと承諾した。

光にも何か感じることはあるらしい。


「それからですが・・・」

柔和な表情を浮かべていた官房長官の表情が厳しくなった。

法務大臣は姿勢を正している。

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