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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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卒業式謝恩会の練習

午後から卒業式と謝恩会があるため、午前中の練習はほぼリハーサル程度、音楽部、軽音楽部、合唱部の少人数コラボが順番に最終調整を行うことにした。

国際テロ集団の脅迫や、異常寒波で多少練習時間が削られたものの、各コラボとも順調な仕上がりを見せている。

練習には、校長も姿を見せた。

満足そうに、リハーサルを聞きながら、合間に光を呼び寄せた。


「本当にお疲れさま、凄かったよ、ありがとう」

校長は光に頭を下げた。


光も恥ずかしそうな顔をする。

「はい、無事戻って来られました、みんなのおかげで」

光も校長に頭を下げた。


祥子先生も何か話があるようだ。

光と校長の前に歩いて来た。

「それでね、校長先生と光君にお願いしたいんですが」

小声である。


「うん、わかった、どうかなあ、光君」

校長は、すぐに理解した。


光も笑顔で

「はい、いい卒業式にしましょう」

祥子先生は、光の笑顔と了承で、肩の荷がおりたような顔になった。

「何しろね、三年生からもお願いされていてね」


「それじゃ、頼むよ」

校長と祥子先生は、教員室で打ち合わせがあるということで、音楽室を後にした。


再び練習が始まり、光のピアノ伴奏で由紀が歌う「素顔のままで」が始まった。


「うわー・・・上手だあ、ピッタリ息が合っている」

「あの二人、本当にいい雰囲気だね」

「恋人同士って雰囲気かなあ、見ていてしっくりくるよ」

「幼なじみっていいねえ、いやそれ以上かな」

「いつまでも聞いていたなあ・・・」

特に華奈にとっては「聞き捨てならない」感想が飛び交っている。


「うーん・・・これはヤバい、最近、お料理もお掃除もサボリ気味だ」

「お母さんが怒るのも、ある意味当然だ」

「本当にこんな状態では、せっかくの寒川様の御力も消えてしまう」

「朝粥二杯なんて場合ではない」

「おそらく寒川様も呆れているに違いがない」

華奈は華奈なりに、気合を入れるのである。


光と由紀の演奏が終わり、次は光と軽音楽部のジャズになる。

曲は、「清水さんのために」と、光が特別に選び、祥子先生にアレンジをお願いした「エイプリル・イン・パリ」。


「ふうっ、かっこいい!」

「光君のリズムが厳しめになっているし、音楽に締まりがある」

「久保田さんも、味のあるフルートだねえ」

「でも、清水さん、歩けるようになってよかった」

口々に、喜ぶ声が聞こえて来る。


光と軽音楽部のリハーサルも終わり、次は光と華奈のバッハになった。


「うーん、大丈夫かなあ、華奈ちゃん、緊張している」

「顔がこわばっている、ああいうところが、可愛いなあ」

少し不安気に見守られていた華奈は、光の伴奏でヴァイオリンを弾きはじめると、落ちついたようだ。


「うん、目を閉じて弾いているね、ああやって緊張しないようにするんだ」

「でも、最初の頃より上手っていうかさ、成長したよね」

「リズムも音程も崩れないし、何しろ必死さが伝わって来る」

「いや、これはいいバッハだよ、光君も顔がやさしいもの」

今度は由紀がアセリ顔になるけれど、華奈よりはさすがに大人。


「まあ、やっと聞かせられる程度になった」

「まだまだ、私と光君の前世からの深い仲には、入り込めないし、入れてあげない」

そんな状態で華奈のことは、特に危険視もない。


様々リハーサルが終わり、お昼休み休憩となった。

今回の卒業式は音楽関係の部活動全員が校歌伴奏などの役があるため、教員と同じ、仕出しの幕の内弁当になっている。


「それでも、さすが校長先生だね、仕出しの弁当っていっても、あの高級ホテルのだよ」

「親にお願いしても、なかなか連れて行ってくれないホテルの仕出しかあ・・・ラッキーだなあ」

「何でも、夏とか秋のコンサートで収益があってね、そのご褒美って、校長先生が言っていたよ、いいご褒美だ」

「お弁当でローストビーフなんて、絶対食べられないしさ」

「とにかく、ご飯の質が違うって、それにさ、出来立てかなあ、温かいもの」

さすが高級ホテルの仕出し弁当、学生たちには好評になっている。



午後からは、卒業式は式次第に沿って厳粛に行われた。

特に校長からの言葉で「本日お別れするのではありません、全員の新しい旅立ちです、そうは言っても寂しい時は、いつでもお待ちしています」の言葉で泣きだす三年生が多かった。

全員が感動の中で、粛々と卒業式は終了し、謝恩会となった。



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