塩タラの朝粥と光の無粋発言
「さて、菜穂子さんとも、お話出来たし、お願いされちゃったし」
春奈は、朝から全く上機嫌になっている。
鏡を見ると顔は若いし、身体の動きも軽い。
朝食の準備も軽やかに進む。
いつもの通り華奈がいきなり入ってきても、全くの余裕になっている。
「あら、華奈ちゃん、少し体型が変わって来た?」
「うん、特に太ったということじゃないよ」
普段は、そんなことなど気づきもしないけれど、余裕のためしっかりと見ている。
「ええ、だんだんとね、私も大人びたサイズになるのです」
「最近、お風呂場で鏡を見て、自信喪失はなくなったしね」
どこまでが本当かわからないけれど、華奈も落ち着いている。
「そうだね、いつまでも子供体型だとね」
春奈は、念を押すけれど、確かに華奈はボリュームアップしているように見える。
ただ、華奈は春奈の言葉など何も聞いていない。
いつもの通り、階段を駆けのぼり、大声三連発が始まった。
「ほらーーー!もう、朝ですよ!」
「昨日練習出来なかったから、今日の午前中音楽室で練習でしょ!」
「それとも、私の前でパジャマ着替えるのが恥ずかしいの?妻の前で何を恥ずかしがっているの!」
余裕の春奈ではあるけれど、華奈の最後のセリフは、容認出来るものではなかった。
若返った足腰で軽やかに階段を駆けのぼり、光から余裕で華奈を引きはがした。
「うーーー悔しい。惜しかった。でも美味しいから許す」華奈
またしても、寸前で光から引きはがされた華奈であるけれど、朝粥が美味しいようだ。
ペロッと食べてしまい、二杯目を食べようか悩んでいる。
「ふん、大声出すから、すぐにわかる、こんな子には光君絶対にあげない」
春奈は、寒川様の御祈祷による「華奈の努力、精進の心」が、かなり薄らいでいることを実感している。
一時は、本当に焦ったこともあったけれど、今、目の前に展開する状況は、「安心を深めるばかり」になっている。
ソフィーも警護と称して入って来た。
「え?塩タラの朝粥?」
「あら、昆布も入って?少しごま油?」
ソフィーの喉がゴクリと鳴っている。
「ああ、ソフィー、またお腹をグウグウ鳴らすわけにはいかないからさ」
突然、光がソフィーに声をかけた。
それにしても、無粋、無神経、不用心な光である。
「もう!何で?私だって若い女の子だよ!」
ソフィーは真っ赤になって怒り出した。
「え?またお腹鳴らすって何?またってどういう意味?光君何を言っているの?」
春奈は余裕が薄らいできた。
というより、少し怒り顔になっている。
「ほらーーー!春奈さんも、ウカウカしているから!本当に光さんとソフィーってアヤシイ!」
華奈は、意味不明な言葉を言っているけれど、華奈もとにかく怒り顔になってしまった。
ただ、ソフィーは我慢が出来なかった。
結局、朝粥を食べ、いつもの通り四人で登校となっている。
「うーん、さすが春奈さんだ、味付けが絶品だ」ソフィー
「いや、あなたのお母さんのニケの読みだよ、湯豆腐も美味しかった」春奈
「本当だね、和風の煮物とか魚を使った料理は、ニケだねえ」
珍しく光もニケをほめている。
「でもさ、これってルシェールには内緒だよね」
多少華奈が心配気な顔を見せる。
「ああ、そうだね、腹いせのハグじゃ終わらない」ニケ
「うーん、愛の妙薬か、それ以上か・・・危険だ」春奈
「マジで危険だ、絶対内緒だ」華奈
巫女たちが様々ルシェールの危険を感じる中、光はいつもの通りボンヤリ顔のまま。
それでも校門が見えた途端、光はホッとしたらしい。
「じゃあ、練習する!」
いきなり駆け出してしまった。
「もう、逃げ足速いって、私も練習しなきゃ!」
華奈も必死に光の後を追っていく。




