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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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悪神との大激闘

「とにかく、ここの駿河湾だけしか、入り込めません」

「他の全ての港や都市には、頑丈な結界を張りました」

阿修羅と地蔵に天使長ミカエルが報告を行った。

阿修羅は、深く頷き、そして地蔵に目くばせを行った。


地蔵も阿修羅に頷いた。

「それでは、時を止めます」

その言葉を発すると同時に、右手の錫杖の鈴を激しく、高らかに打ち鳴らした。



地蔵の鈴の音が鳴りやむと同時に、富士山麓の大空全体が真っ黒なカラスやドラキュラの大群に覆われた。

大地からは古代の戦闘服と剣、こん棒、火弓を携えた数千万いや数えきれない程のミノタウロスが出現、阿修羅たち諸神や天使たちを取り囲んだ。



「ふん、数で勝負か」

圧倒的な軍勢の差である。

しかし、阿修羅の表情は何も変わらない。

既にその六本の手には、天使長ミカエルの鍛えた聖剣が光を放っている。


「それでは、心置きなく、今回ばかりは地蔵も止めません」

地蔵の言葉が戦闘開始の合図だった。



阿修羅は先頭を切って、ミノタウロスの集団に突っ込んでいく。

他の八部衆の神や、観音、ミカエル、天神アポロも同様、武器を振り回しながら、ミノタウロスの集団に突撃をかけていく。


「こんな邪鬼など、どれほどいても意味がない!」


阿修羅の声が聞こえたのは、ミノタウロス集団の先頭に切り込んだ時点までだった。

何しろ、その後の阿修羅の光る剣の動きが、恐ろしいほどに速い。

夥しく凄まじいほどのミノタウロスの絶叫とともに、ミノタウロスの首が空一面に燃えながら舞い上がり、富士山の火口に吸い込まれていく。


また、空からカラスとドラキュラの大群が降りて来た。

しかし、これも阿修羅の光る剣に首を切られる瞬間、赤黒い光を発しては消えていく。


「阿修羅様!」

阿修羅と同じように凄まじい勢いでミノタウロスやカラス、ドラキュラの首をはね上げている八部衆の神が阿修羅に声をかけた。


「おお!ゴブジョーか!久しぶりだなあ!」

阿修羅は、うれしそうに懐かしそうにゴブジョー、つまり八部衆の中でも「まとめ役、官房長官的な」と表現した神に応えた。


「ああ、こういう闘いは確かに久しぶり、いい思いをされていたんですね」

ゴブジョーの剣の速度も、ますます上がっている。


「それでね、クバンダがね、腹が減ったって言うんですよ」

ゴブジョーは阿修羅の顔を見ながら、ミノタウロスやドラキュラの首を飛ばし続けている。


「ああ、そうか、悪神を食べるクバンダかあ、いいだろう、そろそろな」

阿修羅が頷くとクバンダはにっこりと笑い、富士山の火口に飛び上がった。


富士山の火口は、既に夥しいミノタウロスとカラス、ドラキュラの首であふれていた。

それを見たクバンダが笑顔となった。

大きく口を開け、ミノタウロスとドラキュラの首を飲み込んでいく。


「ほう、あの食べっぷりがすごいなあ」

ゴブジョー他、他の諸神、ミカエル、天神アポロもミノタウロスやカラス、ドラキュラの首を飛ばしながら、クバンダのものすごい食欲に驚いている。


鳥神カルラも空に舞い上がった。

「こんなカラスなど、カルラだけで十分!」

大音量で声を発すると、カルラは恐ろしいほどの巨大な鳥となった。

そして、その口を開けると、黒いカラスの集団が、その口に吸い込まれていく。

ただ、銀座の時とは異なり、黒いカラスの集団は、白い鳩に代わることはない。

全てカルラの腹の中で焼き尽くされるのか、黒焦げになり、富士山の火口にいる、クバンダに投げ落とされている。


「さあ!いつまでもこんな邪鬼程度を出しているんじゃない!」

「そのおぞましくも、暗闇の姿を見せるがいい!」

阿修羅は、いきなり大音声を発した。


既に空に浮かぶ黒いカラスは全て富士山の火口に投げ込まれ、首を跳ね上げられたミノタウロスとドラキュラの胴体が富士山のふもとの草原全体に夥しく転がっている。


天使長ミカエルが、不思議な呪文を唱えた。

そして槍を振ると、空は青空に変わり、夥しいミノタウロスの死骸は青々とした草原に変わっている。


「いや、まだ・・・出て来ない、邪鬼は消えましたが・・・」

地蔵がつぶやくと、天空に十体の巨大かつ真っ黒な異形の姿が浮かんだ。


「う・・・悪の神と天使まで・・・」

観音がつぶやくと、その黒い異形の天使が一斉にその槍を振るった。


「これこそ、悪の火!」

天神アポロが叫ぶと同時に、黒い異形の天使たちの槍から、凄まじい雷が大地をめざして突き刺さる。

と同時に、暴風雨が富士の裾野を襲う。


「善の神、天使と悪の神、天使との戦いです」

地蔵が宝珠を握りしめると、阿修羅以外の八部衆、観音、ミカエル、天神アポロが敵と同様、巨大化し、空中に浮かび上がった。

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