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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
387/419

やはり光は無粋だった・・・官邸に到着

「ふう・・・いきなり変化して御力使うし」

ソフィーは光の腕を組んでしまった。

そして、ソフィーは本当にうれしくなった。


「やはり知性と慈愛の神だなあ、弱い者には本当に優しい」

既に車内の温かさと、突然力を使った疲れのためか、ボンヤリとしている光を眺めている。


「でもなあ、やはり体力不足だなあ、身体が揺れて目もトロンとしている」

「うん、このトロン顔は幼稚園の時の光君と同じ顔だ」

「今も可愛いけれど、あの時も可愛かったなあ・・・」

「頭をずーっとなでていたら、そのまま、私の膝の上で寝ちゃったこともあるな」

「それを見て、ルシェールと楓ちゃんが本当に怒ってさ」

「ルシェールは光君の頬っぺたを、引っぱたくしさ、楓ちゃんはお尻蹴飛ばすしさ」

「あの時、華奈ちゃんは、そのまま、光君にしがみついて大泣きだった」

「その華奈ちゃんを、美紀さんが引きはがして、お尻叩いたんだ、それでまた、華奈ちゃんが大泣きさ、あれも可愛かった」

ソフィーは、光の幼稚園時代のいろんなことを思い出しながら、途中で光の頭をなで始めた。


「でも、あれ?本当に寝ちゃうのかな、身体がもたれかかって来たよ」

ソフィーは腕を組みづらくなった。

腕を離して、光を抱きかかえている。


「ふふっ、これは役得だ、絶対あの巫女連中には内緒だ」

ソフィーの含み笑いは当然、光はとうとうソフィーの膝に頭を乗せて眠ってしまったのである。


「もう、全く・・・でも可愛いからいいや、光君なら許す、こっちからお願いしたいぐらいさ」

ソフィーは官邸の入り口で、車が停まるまで、光の頭をなで続けていた。




「着いたよ、光君」

ソフィーは、膝の上で寝息を立てる光に声をかけた。

本音としては、「ずっとこのままでも」と思うが、さすが日本の中枢、首相官邸前ではそんなことは出来ない。


光もぼんやりと目を開け、ソフィーの膝の上から身体を起こした。

「あ、ごめんなさい、寝ちゃった」

光は本当に恥ずかしそうな顔をする。


「いやいや、残念ながら着いちゃった」

ソフィーは思わず本音を言ってしまった。

いつも冷静なソフィーにしては、顔を少し赤らめている。


「ソフィーの心臓の音も聞こえたし、今日はジャスミン系?」

光は、車を降りながらソフィーに突然、聞いて来た。


「え?寝ながら、そんな心臓の音とか、香水とか?」

ソフィーは、真っ赤になってしまった。

そこまで密着していたのかと思うと、うれしくて脚も震えて来る。


「うん、ソフィーのお腹の動きとかさ」

光は、官邸の前に立った。


「ねえ、恥ずかしいよ、こんなところでさ」

ソフィーは官邸の前にして、何ら緊張感のない光が不思議だった。


しかし、次の光の言葉でソフィーの緊張感も消し飛ぶことになった。


「時々、ソフィーのおなか鳴っていたよ、何も食べて来なかったの?」


ソフィーは、歩きながら光のお尻を思いっきりつねった。

そうでもしないと、気持ちが収まらない。

「もう、全く、ちょっとホンワカしていい気持だったけど、本当に無粋な光君だ、絶対そういう面の教育は、私が徹底指導する、これも、あの巫女連中には絶対内緒だ」

何をもって「そういう面の指導」なのか、それはともかく、いつまでも寒い官邸の前に光を立たせておくわけにはいかない。

ソフィーは光と官邸の警備員に頭を下げ、ようやく官邸に入ったのである。


官邸に入ると、官房長官が直接出迎えとして立っている。

光とソフィーに深々と頭を下げ、

「本当に突然で申し訳ありません、これから特別対策室にご案内します」

慎重な物言いである。


「わかりました、それでは早速」

光が頷くと、官邸の地下にある特別対策室に導かれた。


「お着きです」

官房長官が特別対策室の扉を開けると、首相以下全閣僚、陸海空の自衛官のトップ、警察のトップもいるらしい、全員が深刻な顔をして座っている。


「こちらへ」

官房長官の再びの案内で、光とソフィーは首相正面の席に座った。

座席そのものも、光とソフィーを待っていたのか、二人分の座席だけが空いているだけだった。

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