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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第38話光のピアノ

光がクラスに戻ると全員から拍手になった。

当初は睨むような顔をしていた男子学生からも拍手を受ける。

「光君、すごいなあ」

「今まで隠していたの?」

「ボクシングも柔道も、ピアノもすごいや」

「あの祥子先生に褒められるなんて今まで無かったことだよ」

いろんな称賛の声が聞こえてくるけれど、光は手をヒラヒラとさせて笑っているだけ。


「本当にボクシング部も嫌いだったけど、柔道部、特に顧問が大っ嫌いだった」

「ほんと、光君に腕極められて泣き声だすなんて・・・」

「あれでよくオリンピック選手とか、大和魂って言えるよね」

「しかも、逃げ出したし・・・」

「でも、ほんと、すごいなあ」


女子生徒も光を囲んでいる。

その中で

「ねえ、光君」

由紀が尋ねてきた。


「うん」光

「放課後音楽室に行くの?」由紀

「うん、少しだけ行くって約束した」

光はおっとりと応える。

「ねえ、みんな光君のピアノ聴きたいって言っているけど、行ってもいいかな」由紀

「うーん・・・そんなに上手でないけど・・・先生に頼んでみるよ」

相変わらず気のない返事であるが、光は音楽室に行くことを否定しない。


全ての授業が終わり、放課後になった。

光がヨタヨタと立ち上がり音楽室に向かうと、女子学生たちがゾロゾロと光の後ろを歩く。

中には男子学生までついていくものもいる。


「あの柔道部顧問が見たら、激怒だよね」

「まあ、もういないからいいね」

「全く、嫌な人だった」

特に女子学生から柔道部顧問の文句が出ている。

少なくとも女子学生のストレスの一部は解消したようだ。


光が音楽室の扉を開けると、祥子先生が笑顔で待っていた。

しかし、すぐに驚いた顔になる。


「え?こんなに来ちゃったの?」

祥子先生は光の後ろにたくさんの学生がいることに驚いている。

「まあ、いいわ、お入りなさい」

祥子先生は全員に音楽室に入るように促した。

とにかく大嫌いな柔道部顧問が追放されたことで、ご機嫌なのである。


「ああ、光君、ピアノ弾いてみてくれる?何でもいいよ」

「楽譜なら、いろいろあるよ」

先生は書棚に置かれた大量の楽譜を指さした。

光の後ろについてきた、大勢の学生は既に席についている。


「うーん・・・そうですねえ・・・」

光は、大量の楽譜に驚いていたが、やっと一つ取り出した。

「これでいいですか?」

光は祥子先生に楽譜を見せる。


「へぇ・・・」

祥子先生は驚いたような顔になる。

光が見せた楽譜は「ショパンノクターン集」である。


「うん・・・」

祥子先生は、光を伴ってピアノの前に立った。

「譜めくりするよ」

まさか、光がショパンを選ぶとは思わなかった。

簡単な曲ではない、指使いにしても曲想にしても繊細さをかなり要求される。

「どうなるかな・・・」

不安を感じるが、期待も半分以上あった。

何しろ光がピアノの前に座った瞬間から、ドキドキ感が異常に高まっているのである。

見守る学生たちも、光と祥子先生の動きに、声を出さずに見守っている。

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