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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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光のケーキへの反応 夏の運動会の実態

「光君、このケーキわかるでしょ?」

美紀は、この場面では、一番大人、口を切るのは自分だと思っている。

それに、もし万が一、光が泣き出したら抱きかかえようと思っている。

その光の顔を他の巫女たちが、一斉に注目した。


全員に注目される中、光は、サントノレの「あめ掛けシュークリーム」を一口食べる。

「うん、わかるよ。これ、サントノレだよね、美味しく出来ている」

光の表情にはそれほど変化はない。

ショックもないのか、うれしそうに美味しそうに食べている。


「あれ?」春奈

「うーん・・・変化なし?」ルシェール

「ケーキが違うのかなあ・・・」ソフィー

「ソフィーが読んでくれた思い出のケーキと全く同じ形のはず」由香利

「泣き出さないのは、心が閉じているからなのかなあ」由紀

「同じケーキでも、何かが違うかもしれない、私には出来ないけれど」華奈

あまりの反応の無さに、巫女たち全員が、ガッカリする中、「特別のケーキ試食会」は終わってしまった。


ケーキ試食会の後、光はピアノに向かった。

美穂を隣に座らせている。


「ほお・・・お手本だあ」春奈

光は、美穂が弾いていたバッハの平均律クラヴィア曲集を弾き出した。


「うん、キチンとお手本風に弾いている」美紀

「ねえ、歌っちゃおうよ」

由紀がアヴェ・マリアを歌い出すと、他の巫女たちも全員、光のピアノに合わせて歌い出してしまう。

美穂は瞳をキラキラと輝かせながら、光のピアノと巫女たちの歌に聴き入っている。

そんな状態の中、チャイムが鳴った。


「私、出るよ」

どうにも歌に自信がない華奈がいち早く玄関に向かうと、美穂の母らしい。

「本当に美穂がご迷惑をおかけしまして」

少し落ち込んだ声が聞こえて来る。


美紀が歌を止めて玄関に出て来た。

「ああ、明美さん、いいから、開けるから入って来て、お話もあるの」

美紀は、華奈に玄関を開けさせた。

美穂の母、明美が入って来た。

光も玄関で出迎えた。


「ああ、明美さん、リビングに上がってください」

どうやら光は明美を知っているらしい。


「ねえ、光君にも、申し訳ない、じゃあ遠慮なく」

明美は光に頭を下げて、リビングに入り、ソファに美穂と並んで座った。


「夏の運動会以来ですね、あの時は助かりました、ありがとうございます」

光は明美に頭を下げている。

何か、特別な理由があるらしい。


「夏の運動会ですか?」

春奈は、夏の自治会の運動会後、倒れてしまった光を看病したことを思い出した。

ここで光が明美に頭を下げるとなると、他の知らなかった事実があるらしい。


「うん、光君ね、真夏なのに、日焼け止めも塗らなくて、帽子も無くてね、それでも夕方の片付けまで頑張っていたんだけど、会場を出た瞬間、倒れちゃってね」

「そりゃ、そうさ、聞いたら朝ごはんも食べていないしさ、お昼だって、お弁当渡したのに、ほとんど食べていないしさ」

「私も心配でね、光君を家に送ってきてベッドに寝かしつけたの」

「菜穂子さんにもお世話になっていたしね」

明美は、「知らなかった事実」を話し、ピアノの上の菜穂子の写真を見て涙ぐんでいる。


「まあ、今もいい加減だけど、夏なんか、全くメチャクチャだった」春奈

「ほんと、歩く不注意のカタマリ」由香利

「健康管理のケの字も理解していない」ソフィー

「それでも、春奈さんが住んでくれて、生き延びた」ルシェール

「全く心配ばかりかけて、やはり光君には、この由紀が必要だ」由紀

「とにかく、今日の料理は全部出来るようにしよう、千里の道も一歩ずつだ」華奈

様々な想いを巡らす巫女たちであったが、夏に光を助けてくれた明美には、一様に頭を下げている。


「とにかくさ、美穂ちゃんに、そんなことをする人にはピアノを習わせるべきじゃないよ、危険すぎる」

美紀は、明美の顔を見た。


明美も深刻な顔になる。

「私も、時々美穂が顔を張られたのかなあ、手の跡が頬についてくるから、あの先生に電話するんだけど、もう、ものすごい逆切れするの」

「とにかく、甘やかしちゃダメ、引っぱたいても何でも練習させますよって、ずっと怒鳴りまくるの」

「町内会の顔役だしね、あまり近所でもめ事したくなかった」

「美穂も、我慢強い子だから耐えていたんだけど、今日の話はねえ」

明美は、悩んでいるようだ。


「明美さん、僕たちに任せて」

光が、ようやく口を開いた。


明美は光の顔を見た。

「え?任せるって?」

明美は光の言葉の意味がわからないようだ。


「うん、大丈夫だよ、これからその先生のところに行く」

「それで、話をつける」

光は言いきってしまう。

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