美穂を救う計画とケーキの完成
美紀たちが食材をたくさん抱えて帰って来た。
リビングに美穂がいることを見て、光たちから事情を聴いている。
美紀は、すぐに美穂のことがわかったようだ。
「美穂ちゃんだね、美穂ちゃんのお母さんには、お世話になっているよ」
「大変だったねえ、痛かったねえ」
美紀も美穂を抱きしめて涙ぐんでいる。
「おばさんに、ピアノの先生のことは、任せてね、もうそんな先生のところに行かなくていいようにするよ、ちゃんとした先生を紹介するよ」
「大丈夫、安心して、美穂ちゃんを泣かせるようなことはしない」
美紀の言葉で、再び美穂は泣き出してしまった。
「美穂ちゃんのお母さんは、すごく優秀な税理士でね、お世話になっているの」
「今は、申告の時期で、本当に忙しいと思う」
「でも、今はとにかく、後は私に任せて」
美紀は、真顔になっている。
「美穂ちゃん、お昼は、美味しいパスタを作るよ、たくさん食べるんだよ」ルシェール
「美味しいサラダも作るし、すっごく新鮮なお野菜を仕入れたんだ」ソフィー
「その後は、とびっきり美味しいケーキだよ」由香利
「あ、やっと笑った、美穂ちゃん、可愛いなあ!」由紀
ようやく美穂の顔に笑顔が戻った。
その笑顔を受けて、パスタ、サラダ、ケーキに巫女たちは、取り掛かったのである。
「ねえ、美穂ちゃん、何の曲を弾いていたの?弾いてごらん」
笑顔が戻った美穂を光がピアノの前に座らせた。
華奈は、少し心配そうに美穂の横に立つ。
「へえ、バッハか」光
美穂が弾き出したのは、バッハの平均律クラヴィア曲集の一番。
グノーがそれに更にメロディをつけ、アヴェ・マリアとしても名高い。
「そんなに変じゃないよね、華奈ちゃん」光
「いや、指の動きも滑らかで、リズムもしっかりしているし、上手だよ、何で怒られるのかなあ」
華奈も不思議そうな顔になる。
「とにかく、よく怒る先生なの?」
光は、技術以外に原因があるのだと思った。
「はい、突然椅子を蹴飛ばしたり、楽譜を破られたり、怖くて・・・」
美穂は、少し不安気な顔になった。
「それで、ドキドキしちゃったんだ、可哀そうに」
華奈は、ピアノを弾き続ける美穂の頭をなで、そして光の顔を見た。
料理が、一段落ついたのか、他の巫女連中も集まって来た。
「ああ、小学校三年生にしては、十分上手」由香利
「うん、華奈のその当時より、上手」美紀
「それはともかくだけどさ、そんなことより」華奈
「私、絶対その先生が許せない」ルシェール
「とにかく、そのピアノの先生が気に入らなくなって来た」由紀
「光君、やっつけよう!」ソフィー
「そんなゴウマンな暴力芸術家をはびこらせるわけにはいかない」春奈
「うん、私に考えがある、全て任せて」
美紀は胸を張った。
早速、スマホを取り出して何ヶ所かに、メールを打っている。
「美穂ちゃんのお母さんに連絡取れたよ」
「すぐに来るって」
「それから、スペシャルゲストにもね・・・」
「うん、了解だって、面白くなるよ」
美紀の目が光っている。
パスタは、トマトソース、ふんだんに魚貝類を乗せたペスカトーレ。
「どう?美味しい?」
美紀は、パスタを一心に、頬張る美穂をうれしそうに見ている。
「うん、今日の味付けはソフィーだよ、魚介類はソフィーが上手」ルシェール
「さすが鎌倉在住、素材の選び方が上手い」由香利
「すごく参考になりました」
由紀も感心している。
「サラダもお野菜の味がいいなあ」春奈
「そうさ、産直市で採れたてのだもの、スーパーのじゃないよ」ソフィー
「うん、習わないといけない、最近サボリ気味だ」華奈
「ああ、その通り、やっと気づいたか」美紀
ともあれ、パスタとサラダは全員に美味しかったらしい。
後は、問題のケーキとなる。
「うーん・・・出すか」春奈
「そりゃ、そうさ、そのために集まったんだから」美紀
「いや、私はそのためじゃなくても来る」ルシェール
「私には、日々の練習があるから毎日来る」華奈
「私は警備でも来る」ソフィー
「理由がなくても来る」由香利
「もう、ここでバトルして、どうするの?美穂ちゃんも光君もキョトンとしているって」
さすが冷静な由紀は、ようやく立ち上がった。
それにつられて、他の巫女たちも立ちあがり、「特別のケーキ、サントノレ」を配り始めた。
春奈も、少し緊張気味に紅茶を淹れている。




