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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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両手を抑えて泣きじゃくる少女

キッチンで、少し不安な顔をしている春奈に、突然光から声がかかった。

「春奈さん、ちょっとお願い」

「春奈さんの癒しの御力が必要」

少し光の声が焦っている。

華奈も慌てて玄関を開けているようだ。

小さな女の子の泣き声が聞こえて来た。


春奈も突然の想定外のことに、少し驚き、玄関に出た。

すると、小さなな女の子が顔を真っ赤にして、大泣きになっている。

そして、その小さな女の子はしきりにその手を抑えている。


「いったい、どうしたの?」

華奈は、小さな女の子の背中をなでている。

しかし、その女の子はなかなか、泣き止まない。


「どうしたの?おててが、痛いの?」

春奈は、その女の子の手に注目した。

心なしか、手首のあたりから腫れているような感じになっている。


「うん・・痛いよー・・・」

「痛いよー痛いよー痛いよー」

女の子は、手を抑えてとうとう、しゃがみ込んでしまった。


「うん、わかった、取りあえず家に入ってね」

春奈が、声をかけると、女の子は素直に頷いた。

女の子のポーチには美穂と書いてある。


「いったい何があったの?」

春奈は、美穂をリビングのソファに座らせ、美穂の両手を見て驚いた。

何しろ、真っ赤に腫れている、あるいは骨折も疑われる状態になっている。


「ピアノの先生が下手くそって怒って・・・」

美穂は痛みをこらえながら、必死に声を出す。

強い痛みのせいか、身体をねじって苦しんでいる。


「わかった、治すよ、とにかくね・・・」

春奈は美穂の手を握った。

華奈が春奈の身体を支え、春奈は呪文を唱え始めた。

すると、春奈の手から、オレンジ色の光が出て来た。

オレンジ色の癒しの御力である。

そして、オレンジ色の光は、春奈と美穂、華奈を包み込んだ。

しばらく、その状態が続いた。


「ふう・・・これで大丈夫だよ」

「ゆっくり手を開いてごらん」

春奈の言葉と同時に、オレンジ色の光が消えた。

そして、美穂がゆっくりと手を開いた。


「あ・・・動くよ、痛くないよ」

「お姉さん、ありがとう」

美穂は、春奈にむしゃぶりついて泣きだした。


「春奈さん」

光が話し出した。

「華奈ちゃんと練習をしていたら、窓から、この美穂ちゃんが泣きながら手を抑えて歩いているのが見えてね、変だなあとね」


華奈も光の言葉に続いた。

「うん、美穂ちゃん、名前は知らなかったけれど、近所の子なの」

「いつも、挨拶してくれて可愛かったから、びっくりしちゃって」

華奈も、ようやく手が動くようになった美穂にホッとしている。


「それで、先生に何をされたの?」

春奈は聞いてみた。


「・・・ピアノのふたを思いっきり・・・下手くそって言って・・・怖いよー」

春奈の問いに、美穂は再び泣き出した。


おそらく、癇癪持ちのピアノ教師がいるのだろうと思った。

時々、芸術家を気取る人間に、癇癪持ちがいると言う話は聞いたことがある。

それにしても、こんな小さな女の子に、そんな大人げない事をするとは、本当に許しがたい、傷害事件とも言えるのではないか、春奈は怒りを覚えている。


「そこの先生には通わなくてはいけないの?」

光が美穂に、やさしく声をかけた。

「うん、行かないとお母さんに怒られる」

美穂は、不安そうな顔になった。


「お母さんは今、お家にいるの?」

華奈の声もやさしい。


「はい、今、税金の仕事で夕方まで、忙しくていません」

美穂は正直に答えた。


「そうすると、お昼は?」

春奈は、何か考えがあるようだ。


「はい、パンを焼いて食べようかなあって」

美穂は、おそらくトーストで食べるらしい。


「じゃあ、ここで食べて行きなさい、美味しいケーキも作るよ」

春奈は、再び美穂を抱きしめた。


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