表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿修羅様と光君  作者: 舞夢
374/419

最後のケーキ、アントノレ

翌朝になった。

光、ルシェール、春奈が朝食後、リビングに座っていると、チャイムが鳴った。

「むむ、華奈ちゃんかなあ」

春奈が立ち上がると、美紀の声がインタフォン越しに聞こえて来た。


「みんな、おはよう、手伝いに来たよ」

そして、そのまま華奈と入って来た。


「ああ、昨日ね圭子さんから連絡が来てね、あのケーキでしょ?」

「何となくわかるから、手伝うよ」

昨晩必死に探して見つからなかったケーキである。


それを美紀に、簡単に、「何となくわかる」とまで言われてしまった。

春奈は、少しホッとしたけれど、「当分光と一緒に住める」と思い込んでいたルシェールは、少し落胆している。

おまけに、「分野違い」、「まさか来ないでしょ」の、ソフィー、由香利、由紀も登場してしまった。


「だいたいね、光君は、政府の管理下なんだから、ある意味私の管理下だよ、それに私にケーキが作れないなんて、観音様に失礼」ソフィー

「光君のお母さんのレシピって、本当に興味があるの、光君と結婚したら、当然必要だしさ」由香利

「謝恩会で、光君のお母さんのお菓子レシピ使いたいの、だからその日は、春奈さんは先生で忙しいしさ、華奈ちゃんはイマイチだしさ」由紀


「イマイチ」発言で、口を尖らせる華奈であるけれど、「お菓子作り」については、全く反論出来ないようだ。

それでも華奈は、一歩も引かない。

すばやく、キョトン顔の光にすり寄った。


「ねえ、みんな、どういうわけか、お菓子作りするみたいだけど、光さんは私の練習に付き合ってくれますよね、この間の銀座みたいなバッハにしたいの」

華奈は、もう、必死の顔である。

光も、深く考えることはない。


「そうだねえ、なかなか、あのニュアンスが出ないねえ、出来るまでやってみようか」

「がんばろうね、華奈ちゃん」

おまけに光は、やさしい声掛けをする。


「華奈の分だけ、半分にする」美紀

「でも、その方がスムーズに出来ますし」ルシェール

「これだけ人数がいれば、何人かは手持ちぶたさに」由香利

「どうせなら、いろんなのを作って、ケーキパーティーとか?」由紀

「わーーーそれ、いいなあ!」

ちょっとお堅いソフィーもうれしそうな顔になる。

ただ、美紀は少し考えて華奈を含めて巫女全員を呼んだ。


「うん、私が覚えているケーキの他にたくさん作ってパーティーは私も大賛成でやりたいけど・・・」

美紀の考えは全員がすぐに理解したらしい。


美紀が言葉を続けた。

「基本的には、あのケーキで正面から光君に食べさせるべき、そうでないと、これだけの巫女が集まった焦点がぼける」

「それと、絶対に、奈良に一人でいる楓ちゃんには内緒だよ、毎晩寂しいって泣いているらしい、ちょっと可哀そうだからね」

「おそらくね、光君にも慎重にしないといけないんだけれどね」

美紀は「何となくわかる」と思ったケーキを探し出した。


そして、そのまま伊豆の奈津美に確認を取っている。

「うん、たぶん、ケーキの種類としては、これだと思う」

美紀は、集まった巫女たち全員に、レシピのページを見せた。


「へえ、サントノレ・・・可愛い!」春奈

「フランスに古くからあるお菓子か、知らなかった」ルシェール

「飴をかけた小さなシュークリームとメメクリームをパイ生地に乗せるんだ」由香利

「特別な時に出すケーキって書いてあるよ」由紀


「・・・特別な時かあ・・・」

レシピノートの一番下に書いてある言葉に、美紀は腕を組んだ。


「作り方そのものは、複雑さを要しないけれど、光君の前に出すのに緊張するかも」由紀

「光君のお母さんも、特別な時に出すと思って作ったケーキだよ、想いがこもっていたはず」由香利



いろいろ不安を感じる巫女たちではあるけれど、美紀が方針を決定した。

「でも、まだ、菜穂子さんみたいに上手に作れないかもしれない、サントノレだけ、まずは作ってみよう、それが出来ないと前に進まない」

美紀の言葉で、「取りあえずの方針」が決定した。

光の家には、春奈と、音楽の練習をしている光と華奈だけを残し、他の巫女たちは材料の買い出しに出かけたのである。



春奈は、調理器具を並べながら、いろいろと考えている。

「さすが、美紀さんだなあ、頭のキレとか指導力とか尊敬しちゃう」

おそらく美紀がいなかったら、どれほど時間がかかったのか、想像もつかない。


「あとは、作るだけなんだけど・・・」

上手に出来るかどうかは、ケーキ作りの名人ルシェールがいる、そこは大丈夫だと思った。

心配なのは、どういう話し方で光の前に、サントノレケーキを出したらいいのかである。

春奈の心中は、ドキドキ感が強まっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ