表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿修羅様と光君  作者: 舞夢
371/419

人形町の老舗洋食店にて 光とアロマ

ステージから、光と華奈、ルシェール、由紀、由香利、晃子が降りて来た。

「他の神は、また空に飛んだよ」

「何か見回りをしたいらしい」

光はそう言って肩をすくめた。

光の目は輝いている。


「うん、お地蔵様の、計らいだね」ソフィー

「何もかもお見通しさ、だからお地蔵様さ」由香利

「それにしても、少し歩きたいなあ」由紀

「やっとゆっくりできますしね」ルシェール

「銀座は初めてなので、お腹が減るまで歩きたい」華奈

一行は、それでも、少々銀座の街を歩いた。


しかし、結局、特に華奈が「お腹が減った」となり、日本橋人形町の古い洋食店へ向かうことになった。

誰も異論を唱えなかった。

何よりテロ集団との戦いと大勢の人の前でのいきなりの演奏で、心と身体を落ち着けたかったのである。


「ほう・・・風格のある和風の店だけど、ここで洋食?」春奈

「へえ、シチューがスチューって書いてある」華奈

「創業は昭和八年って・・・超老舗だ」」由紀

「柱も磨き込んであって、すごいですねえ、風格があります」ルシェール


「光君、良く知っているね、確かに老舗なんだけど」

由香利は、光の顔を見た。


「うん、日本橋とか銀座とか、両親と買い物で歩くことが多くてね、ここの店は両親ともお気に入りのお店でね」

「父さんはハンバーグ、母さんがビーフスチュー、僕がカレーだったな」

光にしては、丁寧に説明をしている。


「もー、そういうこと言うから、決めるの迷っちゃう」春奈

「光さん、半分こしよう、私はハンバーグ、光さんはカレーってどう?」華奈

「そんなこと決めつけて、光君がビーフスチューだったらどうするの?」由香利

「半分こって言っても、それ以上食べちゃうでしょ?」由紀

「華奈ちゃんの話はまったく当てになりません」ルシェール

どうでもいい会話が一部あったけれど、結局はそれぞれが食べたいものを選んだ。


「うーん、このハンバーグ、ジューシーでトロトロ・・・落ち着く味」ソフィー

「このビーフスチューも、煮込み方が最高、味が深い」春奈

「カキフライも絶品です」ルシェール

「こんなに味が濃いグラタン、美味しいなんてもんじゃない」由紀


それで、結局光はカレー、華奈はハヤシライスを頼んでいる。

「うん、カレーライス美味しそう」春奈

「香りが、すごいなあ」ソフィー

「華奈ちゃんのハヤシライスも美味しいはず・・・だけど」

由香利はクスクスと笑う。


「うん、言いたいことわかった」由紀

「どう考えても、カレーとハヤシだと、半分こは無理」ルシェール

「やはり当てにならないですねえ・・・」ルシェール


年輩巫女たちの分析通り、結局華奈は、光との「半分こ」作戦は達成出来なかった。

「でも、ハヤシもね、かなり美味しい」

華奈としては、精一杯の抵抗を見せるけれど、全員食べるのに夢中となり、全く相手にされていない。


その後、少し人形町の甘酒横丁で甘酒を飲み、人形焼きをお土産に買い、その日は案外すんなりと、全員が自宅に帰った。


春奈と光は、再び二人きりになった。

差し向かいで、紅茶を飲んでいる。


「うん、今日もお疲れさま」

春奈は、光の顔をじっと見ている。

その光の顔が疲れてしまったらしく、少し蒼い。


「はい、ありがとう、上手に案内出来なくて」

光は頭を下げた。


「ああ、気にしなくていいよ、大変なこともあったしさ、よく頑張っていたよ」

「私も少し買い物出来たしさ」

春奈はは、少し光の蒼い顔が気になっている。


「ところでさ、光君ってアロマって好きなの?」

春奈は、話題を変えようと思い、光に聞いてみた。


光と銀座を歩いている時に、お香の店をのぞいたからである。

奈良で育った春奈にとって、お香とかアロマはなじみ深いけれど、関東で育った光がお香の店に入るのは、意外だった。


「うん、特にね、沈香の香が好き」

「それ以外に白檀もいいけれど、乳香とか、華やかにするにはバニラとかさ」

「ああ、珈琲香もあるなあ」

驚いたことに光は、お香に詳しかった。

それを聞いて、春奈はうれしくなった。


「へえ、でね・・・沈香のお香買って来たの」

春奈は、光の顔をじっと見た。


「わあ、うれしい、お願いします、さすが、春奈さんだ」

光は、うれしそうな顔になった。

光の言葉を受けて、春奈は早速沈香のお香をたき始めた。

沈香ならではの、深みのある香りが、家全体に広がっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ