銀座にて(8)警視総監の一喝 え?ミカエル?
「何言っているの?あの警察官たち!」
「あんな怖い人たちを倒してくれたんだよ、あの少年たちがさ」
「しかも自分たちは何もしないでさ。逮捕連行するって何事?」
「ああ、警察の体質って、変わらないね、品川とか渋谷の教訓がないのかなあ」
様々、警察官たちを非難する声が聞こえて来るが、警察官たちの厳しい顔は変わらない。
警察官の中には、既に手錠を取り出している者もある。
「ふーん・・・つまり、あなたたちも、この連中に取り込まれていたってことね、弱みを握られていたんじゃないの?」
ソフィーはまず若い警察官を一瞥し、他の警察官を見た。
そして鞄からタブレットを持ち出し、何かメールを打っている。
「おい!何だ?取り込まれていたなんて?公務員を侮辱するのか?」
「何様のつもりだ!どこにメールを打っている!」
「そのタブレットも没収するぞ!」
「面倒だから全員逮捕しちまえ!」
手錠を取り出した警察官が叫んだ瞬間である。
黒塗りの高級車が四丁目の交差点に止まった。
「ほら、逮捕出来るんだったら、やってごらんなさい」
ソフィーは、黒塗りの高級車から出て来る二人の人物を確認し、自分の名刺を取り囲んだ警察官に提示した。
「え?公安特別調査官?」
「あの、ソフィー様?」
若い警察官はガタガタと震え出した。
「ああ、そればかりじゃないよ、あの車から出てきた人わかるでしょ?」
「あなたたちの監察官と、もっと偉い人ね」
ソフィーは取り囲んだ警察官たちを見据えた。
「あ・・・警視総監・・・」
「やばいよ、これ・・・」
いきり立って光たちを取り囲んだ警察官たちは、既に目もうつろ、腰が抜けてしまって座り込んでしまった者もいる。
「お前たちは、銀座の治安維持という職務をどう考えている!」
「まずは、凶器準備集合の輩を捕縛することが第一ではないのか!」
警察監察官は厳しい顔で、震える警察官を見据えている。
「厳重な取り調べを行う、それから光君に対しても無礼を働いたそうだな」
警視総監も相当厳しい顔になった。
「え?光君って?何ですか?」
しかし、若い警察官が怪訝な顔をする。
光の名前そのものが、わからないようだ。
「たわけもの!しっかり通知文書を読んでいないのか!」
「首相直属の特別調査官だ」
「この大参事になるところを、身を挺して守ってもらったんだ」
「それを取り調べ、逮捕連行などとは、あまりにも無礼!」
警視総監は厳しく警察官たちを叱責した。
警視総監の指示で、全ての街宣車と横たわる戦闘員、そして光たちを取り囲んだ警察官たちは、それぞれの処置されるべき場所に、連行された。
「本当に申し訳ありません。品川、渋谷から銀座まで」
警視総監は、光に頭を下げている。
ただ、光は少し笑っている。
その光の笑顔を見て、まずソフィーが気づいた。
そして、そのソフィーの頭の中を他の巫女たちも同時に読んだらしい。
全員が驚いた顔になった。
「もしかして、警視総監に、ミカエル様が乗り移っているの?」春奈
「ああ、そんな感じ、千五百年ぶりかなあ」
由香利の目の色が深くなった。
「わーーー今度私の神社にも来てもらおう、寒川様喜ぶ」
由紀もうれしそうな顔になった。
「へえ、ミカエル様だけ、大人なんだ、でも千五百年前なんか生まれていないしなあ」
華奈だけは、あまり関心がないらしい。
もっとも華奈は光以外には、そもそも関心がない。
「華奈ちゃんって、ああいうこと言うから、未熟って言われる」春奈
「同じ伊勢の巫女の血を引くものとして恥ずかしい」由香利
「寒川様の巫女仲間じゃなくてよかった」由紀
三人の巫女連中はともかく、光と警視総監は目と目で話をしている。
ただ、その目の正体は阿修羅とミカエルである。
「ところで、期限付きにしたよ、乗り移ったままでいてくれ」阿修羅
「はい、次の大決戦までですね」ミカエル
「何かと都合がいいのさ、ミカエルに、その仕事をしてもらうとね」阿修羅
「あと、出てきていないのは、ゴブジョー様とヒバカラ様、イエスですよね」ミカエル
「ああ、何か言っていた?」阿修羅
「あはは、先に出たかったらしいですよ、それはブツブツとね」ミカエル
「それはそうなんだけどね、まず銀座のゴミをきれいにしたくてさ」阿修羅
「警察官といっても、しょせんは人間、心のスキが多い、悪神はそこをついたんですよ」
しばらく阿修羅とミカエルの会話は続いていた。




