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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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銀座にて(4)内田先生登場、光の過去

「ほら、もう、最初から、ちゃんとしないから、面倒になるの」春奈

「本当に、私がついていないと、何も出来ない」華奈

「ちょっともたついたけど、可愛いから許す」由香利

「私は世話女房タイプだし、全然問題ない」由紀

「しょうがないなあ、光君、でもこんなだから私が必要なの」ルシェール


「でも、なんか、偉そうな人が出て来たよ」

巫女たちが、ブツブツ言う中、ソフィーは、ピアノフロアに顔を出した中年の女性を見ている。

その中年の女性に、まず晃子、そして光が反応した。


「あ、内田先生!お久しぶりです」

晃子はその中年の女性を内田先生と呼んだ。

内田先生も晃子を見て、少し微笑んだ。

しかし、内田先生は晃子より、光をじっと見ている。

そして、光に近寄って来た。


「ねえ、光君でしょ?」

「いやーーー大きくなったねえ・・・」

「小学生以来だよね、私もたまたま、今日は銀座で、コンサートの打ち合わせをしていてね」

「ピアノフロアの店員から、光君が来ているって聞いてさ」

「それを聞いたら、打ち合わせなんかどうでもよくなってね」

「小沢先生から聞いているよ、いろいろとねえ・・・」

「音大に入ってくれるんだって?もう、良かったねえ・・・」

「それでピアノ弾くのためらうなんてだめだよ」

光は一言も話せない状態で、内田先生の言葉が続いている。

どうやら旧知の間柄らしい。


晃子が巫女たちに、内田先生について、そっと説明をした。

「もう、超有名なピアニスト、小沢先生とも懇意でね」

「特にモーツァルトの権威でね、いろんなコンクールの入賞歴もある」

「でも、光君を知っているとはねえ・・・」

晃子は不思議そうな顔になった。


「先生、お久しぶりです」

光はやっと口を開いた。

声が少し震えていた。

「母の葬儀の時は、本当にお世話になりました」

光は頭を深く下げている。


「うんうん、菜穂子さんは残念だったねえ・・・」

「生きていれば、最高のピアニストさ」

「小沢先生の指揮で、私はお葬式の時にスタバートマーテルの演奏メンバーに入れてもらった」

「どうしても、菜穂子さんに私のピアノを聞いてもらいたくてね」

内田先生は涙ぐんでいる。



「先生、まだ下手ですけれど・・・」

光は、再び頭を下げ、防音室のピアノの前に座った。

内田先生、晃子、そして神妙な顔になってしまった巫女たちも防音室に入った。


「えっと・・・覚えている曲でいいですよね」

光は、いきなり弾き出した。


「あ・・・この曲はショパン?」晃子

「そう・・・ノクターンの四番」由香利

「夢見るようなイントロだねえ」春奈

「ドキドキするほど、ロマンチックです」ルシェール

「儚さと嵐のような旋律が交差するんだけど」華奈

「儚さに戻るね、心の奥に沁み込んでくる」由紀

内田先生は何も言わない。

ただ目を閉じて、聞いているだけ。


光の演奏が終わった。


「光君、ありがとう」

内田先生は、演奏終了と同時に光の手を握った。


「いえ、準備も無い状態で聞いてもらって」

光は恥ずかしそうな顔になる。


「うん、小沢先生も言っていたけれど、菜穂子さんのスタイルによく似ている」

「確かにゾクゾクするような音楽性だね、ピアノの技術は問題がない」

「後は・・・」

内田先生は、光の目を見た。

「そろそろ、お母さんを乗り越えなさい、お母さんもそれを願っている」

内田先生は、不思議なことを言った。



光は内田先生、晃子、ピアノフロアの女性店員に、お礼をした後別れ、再び管弦楽器フロアに戻った。

その後、楽譜やCDを様々見た後、楽器店を後にした。




春奈は光に声をかけた。

銀座の楽器店を出てからずっとうつむいている光が気になった。

「内田先生が言っていたこと気にしているの?」


光は、頷いている。

「乗り越える・・・大変だね、でも、いつも近くにいるからさ」

春奈は、自分で言ってホロッとしてしまった。

光も春奈の心を感じたらしく、口をへの字に結んでいる。



ただ、そんな神妙な雰囲気もあっけなく終わった。

光の前に不思議な少年が立っている。

スタジアムジャンパーにジーンズ、スニーカー、首には大きなスカーフを巻いている。

ただ、目付きが鋭く、分厚い唇をしている。

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