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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
361/419

銀座にて(1)

「そうだねえ、治安の面でもこれだけ外国人が増えると、不安要素も膨らむんだけど」

ソフィーは、公安調査官という役目柄か、群衆を注意深く見ている。


「でも、あれ?由香利さん?」

由紀が突然、手を振った。

確かに由香利が歩いて来るようだ。

由香利も光たち一行がわかったのか、手を振っている。


「何だ、来るんだったら迎えにいったのに」

ソフィーもうれしそうな顔をする。

ただ、由香利は手をヒラヒラとさせて、ソフィーの言葉を流した。


「そんな、お迎えいらないって、日本橋人形町に住んでいるんだから」

由香利は笑っている。


「へえ、由香利さん人形町だったんだ・・・本当に近いねえ、人形町も懐かしいなあ・・・」

光は、人形町に何か思い出があるようだ。

その光の言葉に、由香利が反応した。


「え?光君、人形町に来たことあるの?」由香利

「うん、古い洋食屋さんにね、父さんと母さんと来たよ、ビーフシチューが本当に美味しかった」

光は、やさしい顔になった。


「うん、わかるよその店、美味しい店だね、銀座で食べると、この人数じゃ大変、知りあいの店だから予約しようか?」

光に声をかけながら、由香利はさすがに頭が切れる。

春奈、ソフィー、由紀、ルシェール、華奈の顔を見る。


「うん、老舗の芳味亭でしょ、洋食の超名店だよ、一度行きたかった」

ソフィーもすぐに店がわかったらしい。


「へえ、洋食かあ・・・確かにこの人出の多い銀座だとゆっくり出来ないね、美味しいんだったらOK」春奈

「私も聞いたことあるなあ、横浜の名門ホテルで修行したとも」ルシェール

「突然、洋食が食べたくなったぞ、お肉で元気モリモリさ」華奈

「うーん、二人きりのチャンスが難しいなあ、でも、何とかなるさ」由紀

結局、巫女連中からは異論がなく、銀ブラ後は、洋食屋で食事をすることになった。



「さて、せっかく銀座なので、歩こう」

光は、四丁目交差点から歩き出した。

光の左隣には、いち早く由紀、少し遅れて右隣に由香利が並んだ。


「まず、七丁目?」

由紀は場所もわかっているようだ。


「うん、あそこでピアノとか楽器、出来れば楽譜を見たい」

光は、ここで、ようやく本来の目的を思い出した。

そして

「まあ、あまりそういうのに興味がない人は、銀ブラしていていいよ」

光は後ろを気に入らなそうな顔で歩く、春奈、ルシェール、華奈、ソフィーに、一応声をかける。


「あのね、全く自分の立場をわかっていない、光君は警護の対象なの!」ソフィー

「この雑踏の中で、自分の学園の学生を管理するのは教師の役目です」春奈

「私もたくさんのピアノを見たい、好きでついていくんです」ルシェール

「いくら下手って言ってもね、私もヴァイオリン奏者、音楽家のハシクレです」華奈


そう言って、まったく全員が、光と由紀から離れようとはしない。

そんな状態で、一行は銀座七丁目の楽器店に入った。



光と由紀が先頭で、楽器店に入ると、そのままエレベーターで五階のピアノがたくさん置いてあるフロアに入った。


「わあ、本当にたくさんだ」由紀

「ここはは子供の頃から来ているしね、ここにしかないプレミアムピアノや、今人気になっているハイブリッドピアノとか、いつも四十台ぐらいあるのかなあ」

「子供の頃は、母さんが防音室でピアノ弾いていたな」

光は、懐かしそうな顔になる。


光と由紀の周りで他の巫女連中もいろいろ、ピアノを眺めているけれど、やはり、それほど興味はないようだ。


「光さんがピアノを弾いてくれるっていうんだったら聞くけどさ」華奈

「そんな、どこの誰ともわからないような、あんな光君みたいな華奢な高校生なんか、触らせてもらえないさ、こんな高級ピアノ」春奈

「春奈さんも、顔が若くなっているし、もう少し大人を連れて来るべきだったねえ」

由香利

「でもなあ、聞きたい気持ちもあるね、残念だなあ」ソフィー

「私も出来るなら聞きたいなあ」ルシェール

巫女たちは、様々、ブツブツいっているけれど、光はピアノに触る気はないらしい。

こまごまとしたピアノグッズを買い求めている。

対応に当たる女性店員が、光の顔をじっと見ているけれど、光はまるで関心がない。


「じゃあ、弦楽器も見たいので、見たくない人はいいよ」

光には、巫女たちの「つまらなさそうな顔」は、わかっていたらしい。

一応、声をかける。


「光さんは、私がヴァイオリン奏者ということをわかっていない」華奈

「この、銀座の雑踏のなか、バラバラに行動したら危険なの」春奈

「本当に、何が起こるかわからないんだから」由香利


「それでも、何か・・・変」

突然、ルシェールの目が光った。

何か異変を感じたらしい。


ただ、ソフィーは何も言わなかった。

しきりに、窓の外を見つづけている。


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