表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿修羅様と光君  作者: 舞夢
360/419

銀座に出かけることにはなったけれど・・・

「だって、さっきね光君が楽器屋って言うからさ、急に銀座に行きたくなったの」

由紀の目も、キラキラとしている。


「へえ、そうかあ、銀座かあ・・・」

光も否定はしない。


「ね!いいでしょ!たまにはね!」

由紀は、ほぼ強引に、光との銀座デートを決めてしまった。


光も、この時点では、春奈や華奈、ルシェール、ソフィーのことは、大丈夫と思った。

何より同級生の強みで、多少文句を言われても、抗弁が出来ると考えている。


「そうだねえ・・・楽譜も楽器もCDもあるしね」

「見たい店もあるし、食べ物も困らないしねえ」

光も簡単にOKしてしまった。



しかし、そんな光と由紀だけで、「簡単に決めてしまった二人の銀座デート」は、家に帰りその旨を伝えた途端、他の巫女たちから抗議を受けることになった。



「へえ・・・ふーん・・・銀座ねえ、由紀さんと二人だけ?私なんかどうでもいいんだ」

春奈は、本当にいじけた。


「あんな人通りが多い所で、警護だってあるんだよ!光君!自分の立場をわかっているの?」

ソフィーは「警護を理由として」相当に怒っている。


「ありえません!このルシェールを心配させないでください!冬は苦手な光君でしょ?ルシェールの温もりに包まれないで、どうして外出などするの?」

ルシェールは、かなり強行に反対意見を述べる。


「ふーん・・・寒空の下で、光さんの家の前でずーっと泣いてやるんだ」

華奈は「報復行動」まで言い出した。


「そんな大きなマスクをしなきゃならない時期ではなくてさ、もっと暖かくなったら私と行こう」

由香利も感づいたらしい、メールで、時期の変更と相手の変更を言ってきた。



「でね、たくさん引き連れていくかもしれないしさ、面倒なんだけどさ」

翌日になり、光は本当に申し訳なさそうに、他の巫女たちの状況を述べ、由紀に謝った。


由紀も呆れていたけれど、さすがにものわかりがいい、肩をすくめて了承をした。

ただ、簡単には引き下がらないのが、由紀の由紀たる所以。


「ねえ、人ごみに紛れて、二人で姿を消そうよ!」

由紀が話を持ちかけると


光も

「うん、どうせさ、あの人たちは銀座なんて都会には慣れていない」

「どうせ買い物に夢中になる、それに付き合うの面倒だね」

スンナリと同意する。


その光の言葉を、由紀は本当にうれしく思った。

「これこそ、損して得取れだ」

古くからのことわざが、由紀の心の中に明るく響いていた。




 週末の土曜日になった。

 今日は銀座で本来は由紀とだけのデートであったけれど、すんなりとは進まない。


 光が珍しく早起きをしたことでさえ


 春奈かが、まず一言

「あれーーー?どうして、こんなに早く起きるのかなあ?よほどいいことがあるの?」

 見るからに不機嫌そうな顔になっている。


 華奈が入って来た。

 「さて、これから家の前で泣くかな、寒いなあ」

 華奈も、口をへの字に結んでいる。


 クラクションの音が聞こえ、ブルーのワーゲンが光の家の駐車場に入って来た。

 インタフォンからソフィーの声が聞こえて来た。

 「さあ、警護付きのデートだよ、もう由紀さんもルシェールも乗っているよ」

 ソフィーの話し方にも、少しトゲがある。

 

 「面倒だなあ、電車のほうが楽なのに」

 巫女たちの内心の不満など、全く理解がない光は大きなマスクをつけ、ブルーのワーゲンに乗り込み、由紀の隣に座る。


「むむ・・・ためらいもなく」春奈

「すごく自然に座っているのは、学園内からの習慣に過ぎない」ルシェール

「いいや、どうせ光さん、寝ているだけだし、よだれ拭き係をしてもらえばいいや」華奈


様々、反発を見せる巫女連中はともかく、光と由紀は楽しそうに話をしている。

話題は、主にクラス内の学生の話とか、音楽の話のようで、他の巫女たちも容易には、口を挟むことが出来ない。

そのうえ、珍しく光も寝ることもなく、一行は銀座に着いた。


「うわー・・・!ここが銀座かあ!」

「かっこいい!」

「こんなに、たくさんの人って奈良だと、東大寺ぐらしかないよ!」

車を降りた途端、華奈の大声三連発が復活した。

寒川神社の御祈祷以来、「上品に、努力、精進」を誓った華奈の向上心は、由紀へのジェラシーから、あっけなく消え去っている。


「うん、確かに・・・多いねえ・・・大型バスもあちこち」

「それにしても中国人が多い、大きな荷物を持って、これが爆買い?」

「でも、確かにアンパンは美味しいけどさ、行列するほど?」

「やはり、奈良町とは違うなあ・・・」

春奈は、華奈よりは冷静、それでも大都会、銀座の雑踏に目を丸くしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ