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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第36話泣き声をあげる柔道部顧問

「ぐわっ・・・」

次に聞こえてきたのは、野獣のようなうめき声だった。

全員が恐る恐る目を開けた。


「え?」

全員が信じられない状況を目にしたのである。


「どうして?」

全員が目を疑った。

柔道部顧問が腕を光に極められ、音楽室の横に腹ばいになっているのである。

柔道部顧問の顔は、真っ赤になり苦痛の脂汗が噴出している。


「柔道部の先生」

光が弱々しい声を柔道部顧問にかけた。

「授業の邪魔をしないでください」

「それでも、授業を邪魔したいのなら、先生の腕・・・」

光は、柔道部顧問の腕をほんの少し動かした。

数ミリ程度かもしれない。


途端に柔道部顧問は

「ギャア!折れる!」「止めてくれ!」「悪かった!」

既に泣き出している。


柔道部顧問の泣き声で光は腕を離した。

途端に柔道部顧問は、脱兎のように音楽室から逃げ出していった。

音楽室にいる全員が信じられない光景に、言葉を失っている。



音楽講師は、即時に授業を中断し、柔道部顧問の授業妨害と常軌を逸した行動を校長に報告した。

また柔道部顧問にとって運悪く学園の理事会が同じ時間に開催されていた。

音楽講師は理事会でも一部始終の報告を行った。

柔道部顧問は、学内の規定に基づき理事会より即時懲戒処分、半年間の出勤停止を言い渡された。


しかし、柔道部顧問は出勤停止どころではなかった。

柔道初心者の光の胸倉を自分からつかみ、途端に関節を極められ、学生多数の見守る前で泣き声を上げてしまったのである。

しかも、理不尽な授業妨害を行った上である。

もはや学校に留まることは出来なかった。

柔道部員をはじめとして、学内の学生及び教員から侮蔑の目で見られた。

伝統ある柔道部を率い、国粋主義を気取った柔道部顧問が、こともあろうに「児戯、女子供」の音楽室で「サンドイッチで柔道初心者」の光に、泣き声を上げさせられてしまった。

結局、その日に、しょんぼりと学校を去ることになったのである。


しかし、そうは言っても夏の大会は近い。

校長は次の柔道部顧問を探すことになってしまった。


音楽の授業中断後、三十分で音楽講師が戻って来た。

教室を最後に出ようとした光に音楽の講師が声をかけた。

「光君、ちょっと放課後空いている?」


「あっ・・・はい・・・」

いつもの通り気のない光の応えである。


「うん、放課後、時間があったら音楽室に寄ってくれるかな」

音楽講師が微笑んでいる。

普通は気位が高い音楽講師である。

それでも若い頃は、美人ピアニストとして鳴らした。

今でも美貌は衰えていない。


「あ・・・少しぐらいなら、それで何か用事でも?」

光は、「闘い」でなければ特に不快感は示さない。

とにかく光にとって「闘い」は面倒なのである。


「うん、今日助けてくれたお礼と」

音楽講師が光に近づいた。

音楽講師は光を見つめて真っ赤な顔をしている。

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