華奈の原点 奈良で再び楓とバトル
その様子をまず春奈が見とめた。
「華奈ちゃん、どうしたの?」
春奈は華奈の表情が少し変わっていることが不思議でならない。
「あれ?華奈ちゃんって、ここの風景に似合うねえ」
ルシェールも、少し何かに気づいたようだ。
「あれ?何だろう、本当だねえ、珍しく違和感がないねえ」
ソフィーも不思議そうな顔になった。
「そうなんです、特にね宇治橋を渡ってからなんだけどね、身体が熱くなってね、皇大神宮にお参りしてからは、ほーっとしている」
説明は未熟ながら、華奈の言わんとすることはわかる。
「うん、その通り、華奈ちゃんは帰って来たの」
突然、由香利が不思議なことを言った。
由香利の目の色が濃くなっている。
「帰って来たって?」
華奈は、さっぱりわけがわからないらしい。
「つまりね、華奈ちゃんの巫女の血脈は、ここが原点なの」
「圭子さんとか、春奈さんは熊野から奈良」
「そういうことかな、時折様々な時代で混じりあっているけれど」
由香利が説明を続けるけれど、華奈はよくわからないらしい。
まだ首を傾げている。
「まあ、いずれわかります、それから華奈ちゃんが変化を感じたのだから、大神の力が華奈ちゃんを守護するし、成長させます」
由香利は最後に、「華奈の成長」を断言した。
その後は、由香利は伊勢の父の実家に泊まることになり、光たち一行は奈良に向かった。
「へえ・・・華奈ちゃんの血脈って、お伊勢さんだったんだ」
春奈は、華奈に声をかけた。
「うーん、初めて聞いたんです」
華奈は首を傾げている。
「そうだねえ、詳しくは圭子さんなんだけれど、それにしても古い時代かなあ」
ソフィーは目を閉じて探り出した。
「清らかでピカピカって、華奈ちゃんのイメージだよね、それに伊勢様が関係しているんだ、やっとわかった」
ルシェールも頷いている。
「太陽の巫女かあ・・・そうなると由香利さんと華奈ちゃんって関係があるんだね」春奈
「うーん、まったくよくわからない」
華奈は、首を横に振る。
「そうだよね、ずっと奈良しか考えていなかったしね」ルシェール
「それでも、大神様がお認めになって、成長させるっていうんだから」
ソフィーは華奈の手を握った。
「そうですね、私も成長してみたい、そして光さんの傷を癒してあげたい」
華奈は、そう言って光を見ている。
光はいつものごとく、夢の世界に入り込んでいる。
光たち一行が近鉄奈良駅に着くと、楓が改札口に出迎えに立っていた。
・・・そして・・・
「あーーー!もう!」
「また光君、寝ぼけ顔!」
「朝からずーーーっと寝ぼけ顔でしょ!」
「どうしてシャンとできないの?来年から高校三年生になるって自覚あるの?」
「だから、春奈さんとか、ルシェールとかソフィーとか華奈ちゃんには、任せられないの!」
「本当に甘やかしてばかり!」
「いい?ここ奈良に来たら、そんな甘えは許さないよ!」
楓は、光たち一行を見るなり、大ケンマクになった。
「そんなこと言ったってさ・・・」華奈
「ナマケモノの性格は生まれつきだしさ」ルシェール
「直しようがないから、みんなでケアしているのさ」ソフィー
「なんだかんだ言って、自分だけ奈良にいる寂しさからの、やっかみさ」
さすが、春奈は冷静、楓のイライラの原因など、わかりきっている。
しかし、楓の口撃の対象は、次に巫女たちに向かった。
「それになあに?春奈さん、私より若返っているしさ」
「ルシェールもソフィーも華のように、またきれいになっているしさ」
「華奈ちゃんだって、何かいつもと違う、超可愛いし、お嬢様だし」
光への文句を終えた楓は、次に春奈たち巫女を「口撃」する。
さすが楓も巫女のはしくれ、寒川神社、伊勢神宮参拝後の巫女たちの変化を、感じているようだ。
「ふーん・・・」
奈良に着いて、いきなりの楓の「口撃」にまず、春奈が反撃を開始した。
「最近ね、ルシェールもソフィーも光君の家に泊まっていることあるよ」
「今度、華奈ちゃんも、美紀さんの了承次第でいいかなあ」
春奈は言い終えて、ニヤリと笑う。
「そうね、光君のお父さんの部屋も広いしさ、二人ずつ順番でもいいね」
ルシェールも反撃を開始した。
「うん、光君の珈琲も美味しいしね、華奈ちゃんと寝ながらお話しするのもいいね」
ソフィーは、これで案外華奈を「買っている」ようだ。
「楓ちゃんだけ、奈良だし、今後受験も大変だからね、なかなか都内には来られないと思うけど、残念だけど遊んでなんかいられないよね」
華奈の言葉は、慎重ながら楓の「最大の心配事、受験」を正確に指摘している。




