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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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vs柔道部顧問(オリンピック元日本代表)

「はぁ?」

「この伝統ある我が学園誇りの柔道部顧問に対して何たる言いぐさだ!」

「こんな西洋かぶれの音楽など、日本男子の精神を軟弱にするだけだ」

「さっさとやめろ!こんな授業!」

柔道部顧問は暴言を繰り返す。


「それから光はどこだ!」

「出てこい!」

柔道部顧問は光を合唱の中に探している。

しかし、光は合唱の中には見つからない。


「光は逃げたのか!」

柔道部顧問は、怒りで顔がますます赤くなった。



「本当に失礼な柔道部顧問ですね」

「この授業妨害と暴言は必ず、校長先生に報告しますよ」

女性音楽講師の顔も怒りで真っ赤である。


「うるせえ!西洋かぶれめ!」

「少しは、日本精神を尊重しろ!早く光を出せ!」

柔道部顧問は一歩も引かない。


「その光君を出せと言う理由は何ですの?」

「少なくともこの授業を預かっているのは私です」

「突然、授業妨害をされ、こんな暴言を吐かれ、とても許しがたい!」

「ちゃんと理由をおっしゃりなさい」

女性音楽講師の目はキツく柔道部顧問を見据えている。


「ああ、それなら教えてやろう!この西洋かぶれ女!」

「あの光はな、午前中の柔道の授業で、わが柔道部の野村を散々投げ飛ばしてくれた!」

「このままじゃ、我が学園校柔道部の名折れだ!」

「ふざけんじゃねえ!こっぴどく痛めつけなければ、気がおさまらねえ!」

・・・柔道部顧問は、つい本音を言ってしまった。


しかし、その「本音」は誰が聞いても、筋が通っていない。

柔道初心者の光に、柔道部の野村が散々投げ飛ばされたとは言え、あくまでも授業の上である。

それで柔道部が恥をかこうが、かくまいが、光に非があるわけではない。

それなのに、逆恨みをして「こっぴどく痛めつける」と言う。

授業妨害から始まって、この柔道部顧問の言葉には音楽講師や音楽室にいる全員があきれてしまっている。


「光君・・・」

音楽講師はあきれた顔で光を呼んだ。

講師の顔はピアノに向いている。


「ん?ピアノ?」

柔道部顧問はようやくピアノの前に光が座っていることに気が付いた。

「ふざけているじゃねえか・・・」

再び柔道部顧問の顔が不機嫌さを増す。

つまり日本男子が西洋の楽器を使うことが気にいらないのである。


「何だ!光!てめえ!日本男子のくせにチャラチャラ、ピアノなんぞ弾きやがって!」

柔道部顧問は野太い怒声を光に浴びせた。


「あのね、今日はピアノの子が風邪で休んだから、誰かって聞いたら、光君が伴奏してくれていたの、本当に上手、私もかなわないほど」

音楽講師がそう応えると、光が立ち上がった。

相変わらずヨロヨロとであるが・・・。

そのまま、音楽講師の前を通り過ぎて、柔道部顧問の前に立った。


「あの・・・」

光は、いつもの通り弱々しい声である。


柔道部顧問は、光がそのまま自分の前に来るとは予測していなかった。

そもそも、今までの行動が感情に走ったものであり、お目当ての光が自分の前に立つと、何も出来ない。


「何か用事ですか?」

光にとって、当然の質問である。

「痛めつけると言われても・・・」

光は、首を傾げた。

相変わらずおっとりとした口調である。


しかし、そのおっとりとした口調が、常軌を逸した柔道部顧問の感情に火をつけてしまった。

いきなり、光の胸倉をつかんだのである。

「この!てめえ!」

音楽講師をはじめとして学生全員が目をつぶった。

何しろオリンピック出場の柔道家である。

普通の人なら、胸倉をつかまれただけで五体満足ではいられない。

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