アポロの警護
翌朝になった。
光もほとんど回復し、朝食を取っていると、チャイムが鳴り、華奈が入って来た。
ただ、いつもの大騒ぎはない、きちんと「おはようございます」をする。
しかしリビングに入ると、華奈は、本当に驚いた顔になった。
何しろ、いつもの春奈と光だけではない。
超強敵ルシェール、ソフィーが一緒に朝食の場にいる。
そのうえ、あろうことか、春奈の顔、体型が本当に若い、女子高生のように見える。
「むむ・・・いったい、これは?」
今までの華奈なら、ここで大騒ぎとなるところであるけれど、さすが「努力、精進、向上」を決心した華奈である。
慎重に四人の様子を見る。
「ああ、華奈ちゃんの分もあるよ、パン焼いたよ」ソフィー
「ルシェールはね、ちょっとアパートの前にストーカー学生が多いっていうんで、片づくまでここで泊めることにしたよ、何しろこの家までついて来たくらいさ」春奈
「さあ、どんどん座って、スープも珈琲も冷めちゃう」ルシェール
年増三人に言われては仕方がない、華奈は結局、今日も二回目の朝食を食べることになった。
「うん、私の家にも来たよ」
パンを少しちぎって華奈は、ストーカーのことを話した。
「それでね、吽形さんに蹴飛ばしてもらった、これからもずっと立っていてもいらう」
光は華奈に目くばせをした。
華奈は、ホッとした顔になった。
「さて、今日の警護だけど」
ソフィーが具体的な話を始めた。
「光君と春奈さん、華奈ちゃんの警護は、別の公安の人に頼んだ」
「すごく強くて優しい特別の人だよ」
ソフィーはにっこりと笑った。
その途端、ソフィーの全身から光があふれた。
ソフィー意外の全員が目を閉じてしまうほどだ。
「もうだいたいわかっているとは思うけどね」
ソフィーはいたずらっぽい顔になった。
光の目が光り、頷いている。
春奈、ルシェール、華奈は少し震えている。
「それからルシェールと私は、ピエールの教会に行く」
ソフィーは光の耀く目を見た。
光の目がさらに光った。
「ほう・・・出来たんだ」
すると光の声が阿修羅に変わり不思議なことを言った。
「はい、最高のものが出来たとのことで・・・」
ソフィーの声も震えている。
「じゃあ、それぞれ」
光の声掛けで全員が席を立ち、光の家を出た。
「ほお・・・懐かしい」
光は家を出るなり、スーツ姿の紳士に声をかけた。
光の声は阿修羅のままである。
光以外の春奈、華奈、ルシェールは震えている。
ただ、ソフィーはにこやかな顔をしている。
「はい、金剛力士の吽形さんと阿形さんとずっと、昔話ですよ」
「いろいろ、協力した話とか、阿修羅様のこととかね」
そう言って、スーツ姿の紳士はニコッと笑う。
顔つきも本当に若く、美男。
何しろ、その笑顔で本当に癒される雰囲気がある。
「とにかく、この時代も変な奴がいる、いろいろ面倒をかけるけれど頼むよ」
光の言葉は、完全に阿修羅と化している。
「はい、阿修羅様、何としても、あの悪神から光君を護らなくてはなりません」
「それと同時に、巫女様たちも・・・このアポロが」
紳士は、ついに「アポロ」と名乗った。
つまり、アポロが紳士の姿で、降りて来ているのである。
ただ、世間一般の人間には紳士として以外は見えないようだ。
誰もアポロを見とめる人はいなく、通り過ぎていく。
ソフィーとルシェールの車が出た後、光たち一行は学園への通学となる。
「うん、これが通勤通学ラッシュですか」
アポロは、案外話し好きなようだ。
本当に頻繁に光に話しかける。
「そうだねえ、まあ、仕方ないけれどね」
光もはんなりとアポロに応えている。
こういう応えだと、光なのか阿修羅なのか、よくわからないがアポロは構わず話しかける。
「ところでね、気にしていたんだけど」アポロ
「え?何かあるの?」
光の声が阿修羅に変化している。




