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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
345/419

ビーフストロガノフを食べながら

光が少し反応した。

唇が動いている。


「え?なあに?光君」

ルシェールは本当にドキドキした。

光の唇が、再び動いた。

「ルシェール、ありがとう」

「ルシェールの手、温かくてホッとする」

「いろいろ、心配かけてごめんなさい」

そこまで言って、光は再び眠ってしまった。


「もう・・・謝らなくてもいいのに」

「でも、ルシェールの手、気づいてくれてうれしいな」

ルシェールはしばらく光の手を握っていた。


「それでも・・・」

ルシェールはようやく光の手を離した。

手が冷えないようにそっと布団をかけ、光の部屋を観察する。

 

「春奈さんが言っていたけれど、本当に整理整頓してある」

「ゴミとかホコリもない、髪の毛も落ちていない」

「そういえば、写真集も阿修羅しかないって、春奈さんに聞いたけれど」

ルシェールは、確かめたくなった。


「うーん・・・マジで阿修羅しかない」

「光君が、グラビアアイドルの写真を見ているのも気に入らないけれど、何もないのも変だ、いったいどういう男の子なんだ?」

「周りにいる、候補者が強すぎて、見る必要もないのかなあ」

「春奈さんだって、すごく美人だしスタイルもいい、一緒に住んでいて何もなかったのかな?」

「でも、何かあったらすぐにわかるし、今まで誰も何も感づいていないんだから、何もなかったんだ」

「それはそれで、春奈さんも、可哀そうだ」

ルシェールが首を傾げていると、買い出しから春奈とソフィーが帰って来た。


春奈とソフィーも光の部屋に入って来た。

「ああ、どう?」春奈

「よく寝ている」ソフィー

「うん、ほんの少し目を開けたけれど、また寝ちゃった」ルシェール


「ねえ、その手の本何もないでしょ」

春奈も、ルシェールの疑問は理解しているようだ。


「うん、全然、気配もない」

ソフィーは目を凝らして、引き出しやパソコンの中まで、観音様の力を使い透視している。

「普通、高校生ぐらいになると、男の子も女の子も、そういう話題が多いんだけどね」

「とにかく学園内でも、光君はその手の話題には全く、無関心って聞いたことがある」

「真夏に、私がお風呂上りで、少々露出の多い服を着てもね、光君って全く変わらないし、見もしない」

「ある意味、女性としての魅力がないのかと、がっかりしたことがあったぐらいだよ」

春奈は、本当に落胆した顔になった。


「まあ・・・そういう風に光君は自分を縛りつけている、おそらく傷が原因かな」

ルシェール

「もう少し時間がかかるかなあ・・・いろいろねえ」

ソフィーは難しい顔になる。


「うん、煮込み始めよう、結局、この子って、そういうのも亀だ」

春奈の「光は亀理論」は、ルシェール、ソフィーもすんなり納得した。

全員が光の部屋を出て、ビーフストロガノフを作りはじめた。



「どう?光君」

ビーフストロガノフはソフィーの味付けがメインである。

ようやく熱が少し下がったのか、光は顔色がよくなっている。


「うん、ソフィーの味付けっていうか、これはニケの味だよね。ハーブの使い方が美味しい、味も濃すぎないんだけれど、身体の芯から温まる味、ありがとう」

光は一口食べただけで、ニケの味を見抜いている。


「ありがとう、よくわかっているね、これはニケから厳しく仕込まれた味」

ソフィーもうれしそうな顔をする。

「いや、本当にトロトロなんだけど、味がどこか爽やかさがあるし、エキゾチックなわくわく感もある」ルシェール

「今日の素材はスーパーのだけれど、ちゃんとした所で素材を求めたら、味も一段とだね」

春奈がソフィーの顔を見ると、ソフィーも頷いている。


光もなんとか一皿食べ終えた。

「まだ、風邪気味だから、お風呂にサッと入って寝なさい」春奈

「長湯したらだめだよ」ルシェール

「子供の頃は、ルシェールもソフィーも一緒に入ったね、広いお風呂だし、今日もせっかくだから一緒に入ろうか?」

ソフィーは、光の赤い顔が見たかった。

ルシェールも春奈も、ドキッとするような言葉を光にかけた。


しかし、光の言葉は、全員をガッカリさせてしまった。


「多少広いお風呂だけど、何人も一緒に入ると狭くなる、広いお風呂のほうがいい、落ちつくから」

結局、光は一人でお風呂に入り、すぐにまた眠ってしまった。


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