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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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ソフィーの嫉妬と疑問と不安

「いいじゃない!何で赤くなって照れるの?」

「だってさ、家に帰るとさ、春奈さんとかルシェールがいるから、腕なんて組めないしさ」

「私だって、候補者だよ」

「十分、腕を組む権利あるよ」

日ごろ冷静なソフィーにしては、久々に強めの言葉の連続である。


「それからさ、春奈さんが不思議がっていたんだけどさ」

ソフィーは光の腕を組む力を少し強めた。


「え?春奈さんが不思議がっていたって?」

光自身は、春奈の不思議がる内容がさっぱりわからない。


「あのさ、私も子供の頃から、そういうことに鈍感かなあって思っていたんだけどね」

ソフィーは、ますます顔が赤くなった。


「え?そういうことって何?」

ますます光は、困惑をする。

「そういうこと」、「鈍感」、「春奈さんが不思議がる」、その三つの言葉が、頭を駆け巡っている。


「あのさ、光君ってさ、高校二年生の男子だよね」

ソフィーは、あまりにも当たり前のことを確認してくる。


「うん、四月から三年生だけど」

光も、当たり前すぎる答えしか出来ない。


「だから、そういう意味じゃなくてさ」

ソフィーは言いづらそうである。

それでも必死に話し始めた。


「もうさ、そろそろ好きな女性とかさ」

「こんな人とデートしたいなあとかさ」

「そういうのないの?」

ソフィーの顔は真っ赤になった。

少し言葉も震えている。


「うーん・・・」

ただ、光はすぐに答えが出てこない。


「・・・正直・・・あまり考えたことない・・・」

そして帰って来たのは、本当に拍子抜けする答えだった。


「はぁ・・・」

もしかして「ソフィーさんが好き」と言うかもしれない、その儚い望みは泡のように消えた。


「光君が持っている写真集って阿修羅だけだよ」

「普通、あの年ごろならグラビアアイドルの写真ぐらいあるのにね」

ソフィーの耳に、春奈が不思議がっていた言葉が響いている。



「そんなんじゃ、光君の血を引き継ぐとかの、もっともっと前の段階だよ」

ソフィーは本当に信じられなかった。

光の周りにいる春奈、ルシェール、由紀、由香利、華奈は女性のソフィーから見ても、それぞれ美しいし、普通の高校二年生の男子なら何らかの反応があって当たりまえだと思う。

しかし一緒にずっと住んでいる春奈に対しても、お互い信頼しあっている関係とは見えるけれど、「それ以上の関係」まで、どう見ても発展する兆しはない。


「愛の妙薬」で目一杯接近した超美少女ルシェールでさえ、未だ光を「落とせない」し、その時に光をダンスに誘い出した由香利にしろ、二人きりになると光は走って逃げ出すらしい。

華奈もしかり、春奈から聞いた話では、「本当に華奈ちゃんがご機嫌斜めの時に、手をつないでもらえる程度、あやしている程度だよ」らしい。


「そうなるとなあ、由紀さんかなあ・・・でも、過去世のハグを見て顔が赤かった程度じゃ、決められないな」

ソフィーはいろいろ考えるが、どうにも光自身の考えとか気持ちがわからない。

闘いとか戦略は、ある程度わかるけれど、「その方面」については、全く読めない。


「霊界のことは、霊界なので・・・自分を包む光輪が増したことはわかった」

「それゆえ、霊界で一歩阿修羅に近づけた、それは本当にうれしい、二千年も出来なかったことが出来たんだから」

「ただ、今、一番大切なのは光君の心を射止める女性を確定させること、そして男の子を女性に産んでもらうこと、まあ人間の世界的には問題があるけれど、阿修羅の血については、それが掟なんだ」


「私も狙っているんだけど、こうして腕を組んでいても、光君の力弱いし」

「だんだん、腹が立ってきた、この反応の弱さ」

「だから、霊界のお偉いさんたちが心配するの・・・」

「ほんと、すごい面子だよね、阿修羅様、阿弥陀様、お地蔵様、ミカエル、ガブリエル、アポロ、マリア様とイエス、観音様、勢至様、日本由来でもお伊勢様、寒川様、まあ結局ほとんどだねえ」

ソフィーは様々考えているけれど、電車の中での光はすでに眠そうである。


「ああ、もうこんな綺麗なお姉さんに腕組まれているのに、どうして寝ちゃうの?」

「電車に乗っている他の女性たちが全員、赤い顔して見ているしさ」

「こんなんじゃテレビとかに出したら、本当に大変なことになるよ」

「明日から、顔半分隠れるマスクで登校させよう」

ソフィーは苛立ちまぎれに、薬局で顔半分隠れる大きなマスクを二ケース買い求め、光に一ケース渡した。


二ケース買ったのは、

「どうせ、光君のことだ、明日の朝には忘れている、だから私がつけさせないと無理だ」

その意味であった。

そして、事実その通りになった。

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