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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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漁師鍋と光

長谷寺の喫茶室から穏やかな海を見た一行は、ニケの待つ教会に向かった。


「ああ、よく来たね、会いたかったよ」

「もう、すっかり準備は出来ているよ」

相変わらずニケは、歯切れも良く動きがキビキビとしている。

ニケの言葉通り、食欲をそそる匂いが、漂って来る。


「え?ニケさん?もしかして?」

光の表情が本当にうれしそうに変化した。

それも、まれに見るうれしそうな顔になった。


「そんな、もしかしてなんてじゃないさ。光君が今食べたいものなんて、すぐにわかる」

「さあさあ、そんなところで、みんな突っ立ってないで、どんどん入って!」

有無を言わせぬ言葉のパワーと引き寄せるパワーで全員が食堂に入った。



「うわーーー!」

「すっごい!」

「もしかして、これが漁師鍋?」

食堂に入った途端、華奈は大声三連発で騒いでいる。

テーブルの上には大きな鍋、魚貝類が目一杯入った漁師鍋と新鮮なお刺身が並べられている。


ただ、他の巫女の反応も華奈と大差がない。

「いやーーーいい匂いだあ!」美紀

「見た途端にお腹が空いて来た」春奈

「こんなの絶対、奈良では無理!」ルシェール

「えへへ、味噌は自家製なの」

ニケの娘、ソフィーも他の巫女連中の反応がうれしくて仕方がない。


「この伊勢海老美味しいなんてもんじゃない!」美紀

「金目も身がホコホコして美味しい」春奈

「牡蠣ももう、絶品、生牡蠣よりこっちがいいなあ」ルシェール

「ねえ、光君、ホタテ好きだったよね」

ソフィーは鍋からホタテを探して、光のお皿に置いている。


「え?どうして知っているの?」

ずっと食べることに夢中だった華奈がソフィーの顔を見た。

「ああ、子供の頃、時々漁師鍋ここでやってさ、光君ってお魚を食べるの下手でね」

「ホタテは食べやすいってホタテばっかり」

ソフィーは笑っている。


「ああ、お魚も今日は上手に食べているね、小学生の時とは大違いだ」

ニケも覚えているようだ。


「うん、あの後、母さんにけっこう仕込まれました」

光は、少し恥ずかしそうな顔になった。


「そうかあ・・・菜穂子さんがねえ・・・」

美紀も感慨深そうな顔になる。

「菜穂子さんのしつけは、言葉はやさしいけれど、厳しかったなあ」

ニケも、光の母菜穂子のことを思い出しているようだ。


「言葉はやさしいけれど、厳しいしつけ?」

春奈はその意味がわからない。


「ああ、出来るまで何度もやり直し、それに光君が必死に取り組むの、見ていていじらしいほど」

ニケの解説で、春奈は納得している。

 

「美紀って母は言葉も厳しく、しつけも厳しい」

ところが、華奈は、余計なことを言い出した。


「それは、華奈に問題がある、行き当たりばったりで、努力不足」美紀

「うん、わかるような気がする」春奈

「母親っていつまでも苦労するものなのかな」ルシェール

「ニケも未だに厳しいよ」ソフィー

結局、華奈のどうでもいい反発は、他の巫女連中にあっさりとスルーされている。


漁師鍋のシメは、鍋にご飯をいれた雑炊になった。


「美味しい!出汁が効いている!」ルシェール

「本当に温まるねえ」美紀

「レシピもらって帰って、光君と食べる」春奈

「あ、ずるい・・・その時呼んで!」

華奈は、少し慌てた。


「匂いで来ちゃうとか」ソフィー

「あはは、まるで犬だよ、それじゃあ」美紀

どうにも、簡単にやりこめられてしまう華奈である。


「ニケさん、ご飯のかわりに、おもちでも美味しいかなあ」

光は、変わったことを言い出した。

「ああ、そうだねえ、キムチのソースをいれてもいいかも」

ニケも、反応が速い。

漁師鍋のキムチとおもち入りを考えている。

なんだかんだとにぎやかな食事が続いたのであった。

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