善なる意識のネットワーク?
「うん、ついでさ、私も」
春奈も唱え始めた。
「うーん、私にはマリア様もイエス様もいるしね、拝むだけにする」ルシェール
「そうだね、私もちょっと難しいかな」ソフィー
どうも、ルシェールとソフィーはクリスチャン一神教徒、阿弥陀仏を唱えるのは難しいようだ。
「ところで、光さんは?」
華奈は光の様子が気になった。
とにかく、さっきの寒川神社の一件以来、心配で仕方がない。
「ああ、拝んでいるっていうよりは・・・」春奈
「じっと見ているし、目が光っているし」ルシェール
「何かを話しているのかな、そんな感じ」ソフィー
「救いの仏様で、遍く照らす御力か、阿修羅みたいだなあ」
美紀は、光の姿を目を細めて見ている。
「全て善なる意識は、つながっているのさ、今の言葉で言えばネットワークかなあ」
「だから、言い表し方は違うけれど、阿弥陀様に祈ったところで、イエスにもマリアにも、阿修羅にもつながる」
突然、光の声が低く変わった。
「そうね、ネットワークって言葉が面白い、適切かな、さすがだね」
「家で言えば、ブレーカーって言うのかな、メインスイッチが入ると全ての電気機器が使えるでしょ」
「その電気機器、様々あるけど、それが阿弥陀様とか観音様とか、イエス様、マリア様、他で言えば、アポロンとかヴィーナスとかに置き換えればわかりやすいかも知れないってことさ」
「案外同じものを別の表現で行っているだけ」
さすが、宗教史学者美紀の解説になるけれど、光以外の巫女たちは半分わかり、半分わからないらしい。
「じゃあ、イエスにもつながるんだったらいいか」ルシェール
「案外、霊界ではお友達かも」ソフィー
結局、ルシェールとソフィーは、念仏を唱えている。
「人間、大らかが一番」ルシェール
「悩める衆生を救う存在が、派閥争いなどしないって」ソフィー
あっけらかんとしているルシェールとソフィーであるけれど、いつの間にか光と華奈の姿が見えない。
「もう、子供なんだから、あんなの食べている」
春奈は、売店で「おまんじゅう」を食べている光と華奈を見つけた。
「でも、小腹が空いたし美味しそうです」
ルシェールも売店でおまんじゅうを買っている。
「どうして、神社仏閣って、おせんべいとおまんじゅうかなあ」
そう言いながら結局、ソフィーもおまんじゅうを買い、食べ始めた。
ただ、春奈と美紀は、おまんじゅうを半分ずつにした。
「だって、長谷寺にも喫茶室あるしさ」美紀
「うん、それ聞いたら、クリームあんみつが食べたくなった」春奈
「私は若いから、そこでも食べる、美紀ってうるさい人が睨んだら、光さんと半分ずつ食べる」華奈
「そう言って、半分以上食べるくせに」ルシェール
「私は、抹茶と干菓子がいいなあ」ソフィー
「さすが、鎌倉市民、大人だ」
美紀は、ソフィーの言葉を聞いて、自分も抹茶と干菓子に変更をした。
美紀の本音は、少し歩いたので、ビールだったけれど。
「さあ。観光客も多くなったので」
光が全員を次の長谷寺へと促した。
「車も多くなったので、歩きましょう」
確かに鎌倉大仏と長谷寺の距離は、ほとんどない。
多少道が細く、歩きづらさもあるが、すぐに着いてしまった。
「うわーーーーすごい大きな観音様だあ!」
「それにピカピカ、キラキラしている!」
「光さん、ありがとう!私のために、こんな素晴らしい観音様を!」
久しぶりの華奈の、大声三連発になった。
他の巫女たちは、特に観音様の巫女のソフィーは、華奈の最後の言葉「私のために」で、かなり顔をしかめたけれど、とにかく観音菩薩立像の大きさに圧倒されている。
「うん、すごい御力がある」ルシェール
「ふふ、私はその観音様の御力をいただいているの」ソフィー
「ああ、宗教学的には、大天使ガブリエルにも近い」美紀
「厳かな観音様だなあ」春奈
「でもね、あれほど輝いているとね・・・」
光は、少し笑っている。
「え?何か?」
春奈は光の笑顔が気になった。
「うん、目立ち過ぎて外歩けない、その意味で、地蔵さんは動きやすいね」
光の言葉は、納得出来るものだった。
他の巫女たちも聞いていたらしい、全員が頷いている。
観音菩薩立像を見た後は、喫茶室に入り、そこで海を眺めることになった。
ただ、喫茶室内では、他の客の手前もあり、全員が上品に海を眺めていた。




