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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
322/419

にぎやかな朝食

「まあ、難しいことは止めましょう」

「そういうことを少し忘れるために、集まったんだから」

「緊張し通しは、身体にも心にも良くない」

ルシェールが再び微笑んだ。

まさに、薔薇のような輝きを感じる。


「そうだね、ゆっくりじっくり食べよう」春奈


「ほんと、美味しい、ポトフもパンもサラダも」

華奈は自分が作ったサラダを付け加えることを止めない。


「週末は、寒川様でしたっけ」ソフィー

「うん、行ける人全員で行こう」光

「そうだね、初詣と厄払いが必要だ」美紀

そこまではよかったけれど


「帰りに、鎌倉でお刺身食べたい」

華奈、突然変わったことを言い出した。


「今、こんな美味しいポトフ食べている最中になんてこと言うの?」

美紀は呆れている。


「ああ、それなら旬の魚を準備させるよ、そういえばニケが光君に会いたいって言っていたよ」

ソフィーは、そのままスマホでニケと連絡をしている。


「それじゃあ、寒川様と、この間行かなかった大仏様と長谷寺の観音様も見るかなあ」

光は鎌倉で行きたいところがあるらしい。


「あ、私、そういえば鎌倉の大仏様見たことない、見たい!」春奈

「長谷寺からの海も綺麗だよ」ソフィー

「うん、やっと楽しくなって来た」美紀


美味しい食事の後は、恒例となった光の珈琲を飲み、三々五々帰った。


「光君、ある意味積極的に出るところと、周りを活かす、金剛力士とかソフィーを動かせたみたいに、成長したのかな、ますます離れがたいなあ・・・」

春奈の心の中で、光の存在が本当に大きくなっている。




寒川神社への出発は、午前九時の予定。

しかし、光の家は、午前七時の段階で、既に大騒ぎになっている。

キッチンでは、華奈、ソフィー、ルシェール、美紀、春奈が動き回っている。


「だって、こんな立派なパン焼き釜使わないのが、もったいない」美紀

「結婚したら、光君のために毎日焼く」ルシェール

「トルコ風ピザも出来そう」ソフィー

「それってどんなの?」華奈

「ああ、船の形をした生地が独特のピザだよ」ソフィー

「へえ、面白そう、今度さ、ピザパーティーやろうよ、いろんなピザ焼いてさ」春奈

「いいねえ、でもさ・・・」華奈

「え?何か問題ある?」ソフィー

「絶対、奈良の楓ちゃんには内緒だよ、本当に拗ねるからさ」華奈

「うーん、そうだよねえ、拗ねるね、きっと」春奈

「それはそうだねえ、あの子だけ奈良だしね、若い子はみんなこっちに来ちゃった」美紀

「そう?お母さんは、その若い子に入らないけど」

どうしても華奈は、余計なことを言ってしまうようである。

そして、いとも簡単に返り討ちに会う。


「どうして生地丸めるの下手なの?」美紀

「うん、確かに不格好です」ルシェール

「ただ、ぎゅっと押しているだけ、指先の細かい動きも必要なの、みんなの指の動きを見て」春奈

「こんなことなら楓ちゃんを家で引き取って、華奈を圭子さんに預けるかなあ」美紀

「ああ、それっていいかも、楓ちゃんの顔が見たくて仕方ない」ソフィー

ソフィーにまで言われてしまい、華奈は既に涙目、それでも必死にパン作りに取り組むけれど、華奈作成パンの出来上がりは、特に形が芳しいものにはならなかった。


それでも何とかパンは焼きあがり、光が淹れた珈琲を飲みながらの朝食になった。


「ねえ、光さん、私の作ったパンを半分あげる」

華奈は自分の作ったパンを半分にちぎり、光に渡している。


「あ、ありがとう、うれしいな」

光は、一応、お礼を言い食べ始めるが、華奈以外の巫女たちが期待するような反応はない。

あまりの反応の無さに、声もかけ始められる。


「ねえ、まずかったら、食べなくてもいいよ、どうせ華奈のパンだし」美紀

「はじめて作ったパンだから、なかなか美味しくないかも」春奈

「すぐに口直しで、私のパンを食べてね」ルシェール

「ああ、でも、食べて飲み込んだよ」ソフィー

結局、光は華奈からもらったパンを全部食べてしまった。


「そんな、大丈夫さ、華奈ちゃんが、一生懸命に作ったパンだもの、形とか食味だけじゃないし、その心を味わうのさ」

光の表情には何も変化がない。


「これは案外我慢強い」美紀

「案外、救いの御子かも」ルシェール

「ああやって、やさしいことをしちゃうから、華奈ちゃんはつけあがる」春奈

「うーん、なんだかんだと言っても、華奈ちゃんの可能性も強いなあ」ソフィー

それぞれが、それぞれの思いを持ちながら、にぎやかな朝食となった。


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