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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
321/419

ポトフを囲んで

しかし、その自然な笑みが春奈には、少々気に入らない。

「確かに美味しそうな匂い、美味しいとは思うけど、どうしてそれを知っているの?」

「全く危なくて仕方がない」

そんな思いで、春奈は光の顔を見た。


「そうだなあ、最後に食べたのは小学校五年生の時だよね、奈良のクリスマスパーティーだった、すごく美味しくてさ」

光は、笑顔のままである。


「うん、母ナタリーのレシピに、少しハーブを効かせて作ったの、あの時まで光君って人参ダメだったんだけど、よく食べてくれてね」

ルシェールはニッコリとする。


「え?春奈さんはともかく、私、それ知らないよ」

華奈の記憶にないらしい、華奈は首を傾げた。

「あら、私覚えているよ、私も、ポトフ食べたし」

しかし母の美紀は、よく覚えているようだ。


「そうだよね、圭子さんも美紀さんも美智子さんも来てくれたよね、何で来なかったの?あの時」

ルシェールは華奈に尋ねた。


「あ、思い出した、あの時さ」

しかし、光が珍しく思い出した。


「何かあったんだっけ」

美紀が光の顔を見ると


「うん、楓ちゃんが、薬草から特製の薬を作って持ってくるって言ってさ」光


「あーー、思い出した!それを二人で先に飲んだら、お腹痛くなって行けなかったんだ」

華奈も思い出したようだ。

「そうかあ、楓ちゃんが悪いんだ、そんなこともあるんだ」

ソフィーもやっと納得した。


そんなたわいもない話をしながら、なんとかポトフの最終味付けも終わった。

華奈のサラダ作りは、美紀、ルシェール、ソフィーに厳しく指導されながら、「何とか食べられる程度」のものになった。


「ふう、この家って落ち着く」

美紀は、少し赤ワインを飲みながら、ポトフを食べている。


「このハーブの使い方かなあ、後で教えて」

春奈も、本当に美味しいのか、じっくりと味わって食べている。


「ホッとする味だね、疲れが取れる」

光も、いつもにも増して、食欲があるらしい。

ポトフもパンも多めに取っている。

その光の取り皿に、華奈がサラダを入れている。

「まず、私特製のサラダを食べないといけません」

華奈は、そう言うけれど、ほとんど他者から指示された通り、何をもって「華奈特製」というか、よくわからないものがある。


「でも、駅前は大変だったね。お疲れさま」

ルシェールは、心配そうな顔になった。


「ああ、まさか、あの真面目な喫茶店で騒動を起こすとは思わなかったけれど」

「あの駐在所も、腐りきっていたからさ」

ソフィーは、少し暗い顔になった。


「金剛力士様も、相当手加減していたね」華奈

「うん、地面に叩きつけるにしても、相手が弱すぎて力を出し切れないってさ」春奈

「人間の武器なんて、通用しない、霊界の存在にはね」

ソフィーは深いことを言うけれど


「それにしても、あのダウンとジーンズ、革靴、禿頭に帽子は違和感があったなあ」

光はいつのまにか、阿修羅の口調になっている。


「そういうこと言うから、口争いが起こるの」

春奈は、少し心配になる。


「なるべく普通のおっさんみたいな恰好にしたんでしょ、まあ正解さ」

ソフィーとしても、金剛力士たちの意図を理解する。


金剛力士二体の変化姿も話題になった。

光家の外で警護する金剛力士にも、その言葉は当然聞こえ、二体とも苦笑いになっている。


「あれだけ、大っぴらに群衆の前で失態をさらけだしたんだから、あの警察署の処分もきつくなるの?」

春奈は、ソフィーの顔を見た。


「うん、あそこの駐在所に限らず、監督責任はかなり上まで行くね、しかも反社会的勢力との癒着だしね」

ソフィーの顔も厳しい。


「今回の敵は、そう言った社会的な敵が多いね」

春奈は、今度は光の顔を見た。


「うん、警察関係とか、政治家もあるかな・・・」

「芸能プロダクションも反社会的勢力と関係していたけれど」

「いわゆる、ゴウマンな考えを持つ輩、それにより相手の破滅、破壊を喜びとするもの」

「善を滅ぼし、悪に加担する、そういう悪の霊が取りついた相手かなあ」

光は、少し難しい顔になった。

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