金剛力士VSチンピラ
「おい、ちょっと待ちな!」
突然、二人の大男が姿を現した。
そして震えて立ち上がれない、三人の女性店員の前に立った。
「あれ?」春奈
「金剛力士様がいない」
華奈はキョロキョロと周りを見回している。
「あ、あいつら、変化しちゃった」
光は二人の大男を見ている。
光の言う通り、金剛力士は変化しているようだ。
少なくともいつもの上半身裸で、アジア風のスタイルではない。
毛糸の帽子をかぶり、普通の現代人が着るようなダウンジャケットとジーンズ、足は革靴を履いている。
「あのハゲ頭だから、毛糸の帽子?」
「それにしても似合わないなあ」
光が笑いながら、ヤクザの前に出て行こうとすると、腕を引くものがいる。
「ああ、こんな程度のだったら、彼らに任せましょう」
顔を見ないでも腕を引いた主はわかった、ソフィーである。
「そうだね、あいつらも一日立っていたからストレス解消かなあ」
光、おそらく阿修羅は、取りあえず見守ることにした。
「おいおい!何だ、お前ら!」
若いチンピラが、突然現れた大男二人に金切り声をあげた。
「何の関係があって、邪魔するんだ!」
「変な邪魔するなら、タダじゃおかねえぞ!」
少し年輩のヤクザも声を荒げた。
親分らしい男は、じっと見ている。
しかし、人間に変化した金剛力士は全く怯まない。
「とにかくな、そんな非道なことはするな」
「煙草とやらが、ダメってことなら、決まりを守ってやれ」
「そんなチッポケな我慢も出来ないのか、情けなくないのか」
「それで迷惑料だと?男なら力で獲物を勝ち取れ」
「それにな、大の男が三人で、女子を責める、恥ずかしくないのか!」
「どうしてこの時代の男は、そうフヌケなんだ」
阿形は、大音量でヤクザ三人を怒鳴りつけた。
その横で、吽形が厳しく睨みつけている。
「おい!フヌケとはなんだ!」
まず若いチンピラが声をあげた。
その手には、ハンティングナイフが握られている。
「いいか、このシマにはこのシマのキマリってものがある」
「それを諭していただけだ、よそ者に言われる筋合いじゃねえ!」
少し年輩のヤクザが金剛力士についに、歩み寄っていく。
その右手には短刀が握られている。
親分も戦闘準備らしい。
内ポケットから拳銃を取り出している。
益々、群衆から悲鳴が上がっている。
警察に対する文句も聞こえて来る。
「これでも警察は何もしないの?」
「ああ、おそらくね、親分の前では何も」
「フヌケって言われたから、絶対、刃物使うよ」
「そんなの関係が無い、あそこの警察は事件が終わってから処理に入る」
「そして、親分たちは絶対にお咎めなしで終わる、嫌疑不十分でさ」
「結局、警察官の作る調書次第でね、本庁の検査も緩いし」
「ソフィー?」
春奈は心配そうな顔でソフィーを見た。
ただ、ソフィーは何も表情を変えず、ずっと録画を撮っている。
「ああ、大丈夫、おそらく全て調べ上げてある」
光がソフィーを見ると、ソフィーは頷いている。
「許せねえ!」
若いチンピラがまず阿形に襲い掛かった。
ハンティングナイフの切っ先を阿形の胸に向けて一直線に突っ込んだ。
しかし、結果は無残だった。
ハンティングナイフは、阿形の手の平で止まり、そのまま砕け散った。
そして、阿形は若いチンピラを抱え上げ、思いっきり地面に叩きつけた。
おそらく、その衝撃で身体のかなりの骨が折れたらしい。
若いチンピラは声もほとんど出せず、阿形に足で踏みつけられている。
年輩のヤクザも、若いチンピラとほぼ同時に、吽形に襲いかかった。
短刀ではあるけれど、今度は突きではない。
吽形の頭に向かって恐ろしく高い跳躍、短刀を吽形の頭めがけて振り下ろす。
「ふん!」
その瞬間、吽形の張り手が年輩のヤクザの頬を振り抜いた。
あまりの張り手の衝撃で、年輩のヤクザは空中で一回転、これもまた地面に叩きつけられ、口から泡を吹いている。
「さあ!どうする!」
二人の子分の信じられない姿に驚いている親分に向かって阿形が怒鳴った。
親分は、拳銃を持ちながら震えている。




