結局、阿修羅と金剛力士は仲良し
「わかった、そのゴツイ顔が怒ると、もっと怖い」
「華奈ちゃんの家だけじゃない、この光君の学校の前でも立って護ってくれ」
阿修羅は、また更に懸命に金剛力士をなだめている。
ただ、金剛力士は、まだ気に入らないようだ。
それには、話を聞いていた春奈とソフィーも首を傾げた。
「あ、わかった、電車の中でもってこと?」
華奈が、何故か吽形に聞いている。
吽形は重々しく頷いた。
「ああ、そうか・・・邪鬼は雑踏の中でも、騒動を起こすしなあ」春奈
「万全には万全を期すってあるしね」ソフィー
「どうせ、一般の人には見えないけれど、ゴツイなあ、それに身体も頑固なら心も頑固だ」
阿修羅の嘆きはともかく、とうとう金剛力士二体は、終始光たちの警護に立つことは、決まってしまったようである。
「まあ、電車というものに乗りたかったんだろ?」阿修羅
「ああ、そのほうが、この時代の実態が見える」阿形
「空を飛んで直接、着地だとわからないな、確かに」阿修羅
「そうさ、阿修羅はこの時代の人と接し、この時代のものを食す、それは面白いはずさ、それを独占するから、八部衆を含めて気に入らない」阿形
「うーん、そう言ってもな、お前たちの顔は、怖すぎるしさ」阿修羅
「そんなに怖いかなあ・・・まあ、そうかなあ」阿形
「まあ、それはともかくさ、この時代の相撲も見てみたくてさ」吽形
途中から驚いたけれど、吽形も口を開いている。
結局、阿修羅と金剛力士は仲良しらしい、電車の中でもずっと話し込んでいる。
校門の前に由香利と由紀が立ち、光たち一行を待っていた。
少し遅れて校長も出て来た。
三人とも、金剛力士の姿を見ることが出来るようだ。
少し怯えたような顔になる。
「ほら、怖い顔ばかりしているから、ああいった反応になる、だから、簡単には見せられない、校長も由香利さんも由紀さんも、多少わかった人だから、あの程度だけど、普通の人が見たら、大混乱だ」
阿修羅の言葉には全く遠慮が無い。
隣で聞いているソフィー、春奈、華奈がハラハラするぐらいである。
「そうは言ってもな、こういう怖い顔をしているのが、金剛力士の金剛力士たる所以だ、おいそれとな、にこやかな顔なんぞ今更出来ない」
そう言いながら吽形は、ますます苦々しい顔になる。
「まあ、校長も金剛力士様の意図はわかったようだから」
ソフィーがようやく助け船を出した。
「じゃあ、まあ、そういうことで・・・」
途端に阿修羅は光に戻ってしまった。
校長に、頭を下げ、由紀と自分のクラスに向かっていく。
「うーん、あなたたちの関係って不思議」
ソフィーはクラスに向かって歩いていく光と金剛力士を見比べている。
「まあ、阿修羅は、本来は最高に強い阿修羅様なんだけど、正義感も強いし、慈愛の心も深い、それで適度に冗談も言うしな、とにかく話しやすい最強神さ」
珍しく吽形が阿修羅について解説した。
「それだから、神々からも最大の人気、人の心を引き付ける力も最高ランクさ」
「特に人の心が引き付けられない神は、その力も弱い」
「その神の力の源泉は、寄り集まった心や想いなのさ」
「だからその想いが最高に多く強い阿修羅は最高に強い神なんだ」
阿形が、もう少しわかりやすく、また深い話をした。
「ただ、阿修羅のような光の神もいれば、アーリマンのような暗闇の神もいる」
「全ての恨み、悔しさ、嫉妬もあるかな、相手に危害、破滅を与えたいという人々の願望を力の源泉にする神もある」
「悪の心を寄せ集めた集大成がアーリマンなの」
ソフィーが付け加えた。
金剛力士二体も、その言葉に頷いている。
「さて、それでは、よろしくお願いします」
「本当に有益なお話、ありがとうございます」
校長は、金剛力士二体とソフィーに頭を下げた後、春奈、由香利、由紀、華奈を伴い、学園内に入っていく。
「まあ、学園内ならば、校長も結界を張るから大丈夫」ソフィー
「うん、校門は俺たちに任せてほしい」阿形
「ありがとう、少し情報を集めて来るよ」
ソフィーがニッコリ笑うと、ソフィーの背中に羽が生えている。
「うわっ、久しぶりだなあ」
金剛力士二体が驚いていると、ソフィーはものすごい速度で空中に舞い上がった。
そして、すぐに姿が見えなくなった。




