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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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異変発生、華奈の蒼い顔

ただ、その悩みは、春奈も十分納得出来るものであった。


「そうだねえ・・・あの子、自分で考えるっていっても、考えそうにないね」

「結局、光君に泣きつくしかないし、だから考えてあげようとしていたんだ」

「それにしても、厳しいねえ」

春奈とて、華奈のヴァイオリンの「実力」は、よく知っている。

それゆえ「光のやさしさ」は気にかかるけれど、何とか「力になってあげたい」と思う、「やさしい春奈さん」なのである。


しばらく二人で「華奈の出来る曲」を探し、ようやく「まあ、これなら」というものを探した。

バッハのヴァイオリン協奏曲のテンポのゆっくりとした第二楽章を光のピアノ伴奏でということになった。


さっそく光が華奈に連絡を取ると、華奈としては反発も何もない。


「わーい!」

「あの曲大好き!」

「光さんも大好き!」

光の近くで聞いている春奈にも、はっきり聞き取れるほどの大声三連発である。

ただ、それが決まったことにより、華奈の悩み顔は一旦、おさまった。

春奈も光も、その「悩み顔」を見なくていい、ひとまずの安心に包まれ、その夜は眠りにつくことが出来たのである。



翌朝になった。

春奈と光は、少し異変を感じている。

いつもは、午前七時半前に大騒ぎする華奈の声が聞こえて来ない。


「昨日の曲決定の話で安心して、たくさんお菓子食べて、おなか壊したのかな」春奈

「何か、料理で失敗して美紀叔母さんから、怒られているのかな」光

春奈も光、普段は「やかましい」と思いながら、華奈が来ないと少し寂しく心配になる。


「ねえ、どうする?ご飯食べちゃう?」春奈

「そうだねえ、冷めても美味しくないしね」光

そんな話をしている矢先であった。

チャイムが鳴り、華奈が入って来た。

続いてソフィーが入って来たけれど、二人の様子が変、特に華奈の顔が蒼くなっている。

ソフィーは華奈の背中をなで続けている。


「ねえ、華奈ちゃん、どうしたの?顔が蒼いよ?」春奈

「何かあったの?大丈夫?」光

春奈も光も全然状況がわからない。


「あのね、今、この子、話が出来る状態じゃないから、私から話すけれど」

ようやくソフィーが口を開いた。

ソフィーの目が光っている。

それに呼応して光の目も光った。


「ついに手下が動き始めたらしい」

ソフィーの声が少し震えている。


「手下って、あのアーリマンって神の?」

「で、具体的には?」

春奈の声も震えた。


「うん、まず華奈ちゃんが家を出た瞬間だよね」

ソフィーが華奈の顔を見た。

華奈は、顔を蒼くしながら震えている。


「ちゃんとした帽子をかぶり、コート、スーツを着た人が通り過ぎた」

「その人が華奈ちゃんを見た」

「しかし、その人に顔がなかった、見えたのは真っ赤な光る目だけ」

華奈の身体の震えが大きくなって来た。

ソフィーがしっかり支えないと、座り込んでしまいそうだ。


「それで、その人が通り過ぎた後、猫、犬、ウサギの血だらけの死骸が山に」

ソフィーが、そこまで言うと、華奈はついに泣き出してしまった。


「あーーー怖いよーどうしたらいいの?」

本当に大泣きになった。

光は、立ち上がり華奈を抱きかかえ、ソファに座らせた。


「う・・・まあ、仕方ないが・・・」

春奈は多少気に入らないけれど、この状況では仕方がない、ソフィーの次の言葉を待った。


「取りあえず、死骸は私が消しました、それから例の悪魔の手下の探索は・・・」

何故か、ソフィーはここで光の顔を見た。

ただ、光もわかっているらしく頷いている。


「あいつだ、カルラに頼んだ。鳥の顔した八部衆さ、上から見るにはちょうどいい」

「ああ、春奈さんが昨日、本で読んだ、あいつだよ、鳥の顔をした神、カルラが見張っている」

光というよりは、既に阿修羅の言葉になっている。

春奈の昨日の行動もしっかりと読まれているようだ。

驚く春奈に、阿修羅はさらに、驚くことを言った。


「そのカルラの指示で、他の八部衆も即時に動くようにした」

「とにかく、強いぞ、みんな・・・阿修羅にはかなわないが、ちっぽけな悪魔の手下なんぞ、赤子の手をひねるようだ」

そう言い終えて、光の目の光が消えた。


「とりあえず、簡単な結界は華奈ちゃんの家と光君の家に張ったけれど・・・」

ソフィーは光と春奈の顔を見た。

華奈は、いまだ震えがおさまらない。


「とにかく早く、寒川様で強い災い封じの術を、つまり光君との・・・可能性がある巫女さんたち全員で行きます」

ソフィーの言葉で、週末の寒川神社に集団参拝が決まったのである。

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