表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿修羅様と光君  作者: 舞夢
308/419

春奈の八部衆学習、ルシェールのあせり

ともかく微妙な雰囲気は漂っていたものの、ソフィーに警護されて光たちは学園に到着した。

光と華奈がそれぞれのクラスで授業を受けている間、春奈は保健室でソフィーから渡されたレポートを見ている。


「うん、寒川神社の抜け駆けは許さないとして、もう少し八部衆を知ろう」

春奈は、真面目に読み始めた。


『インドで古くから信じられてきた異教の八つの神を集めて、仏教を保護し、仏に捧げものをする役目を与えて八部衆とします』

『仏教の教えに基づいた神ではないので、その生い立ちや性格、また姿やかたちは様々に説かれ、複雑で不明な部分が多くあります』

『仏教に取り入れられてからも、異教の神の姿のまま、表現されることが多いのです』

春奈は、少しずつ読んでいく。


「ふーん・・・仏教の教えに基づかないんだ、それで取り入れたんだから、それは複雑かなあ、異教の神そのものの姿で表現、出現か、ああそれで阿修羅だけが光君に乗り移っていい思いってことかなあ、それが気に入らないんだ」

「阿修羅もそのままの姿で、出てもらうつもりだったのも、わかるような気がする」

「天平六年、七三四年にはあったんだ、その時代の光君ってどんなかなあ・・・」

「春奈さんもいたに違いない」

春奈は、勝手な思い込みをしながら、ひとつひとつの神を見ることにした。


「五部浄、ゴブジョーって読むんだ、へえ、可愛い男の子って感じ、頭に象の冠だね」


「沙羯羅、サカラ・・・かあ、この神様も可愛いなあ、水中の竜宮に立つか、雨を呼ぶ魔力、頭に蛇を巻いている、龍神かなあ」


「鳩槃荼?クバンダって読むんだ、難しい漢字、顔が怒っていて怖いなあ、八部衆の夜叉で死者の魂を吸う悪鬼で人を苦しめる神?」


「乾闥婆、ケンダッパ?帝釈天宮で音楽を流すんだ、天界の神酒ソーマの番人ねえ」


「迦楼羅、カルラね・・・鳥の顔している。龍を食べる?雨を降らし、大雨を止める」


「緊那羅、キンナラか、頭上に一角、額に縦に三つ目、音楽神か」


「畢婆迦羅、ヒバカラ?これも字が難しい、これも音楽神か、大型ニシキヘビを神格化して、横笛を吹いて諸神を供養だって」


ただ、春奈は、結局よくわからなかった。


「そもそも漢字がよくわからないし、それぞれの役目も重なったり、悪神がいたりして、確かに経緯が複雑で不明だなあ」

「いいや、家に帰って光君じゃなくて、阿修羅に聞くことにする」

「光君には、抜け駆けしようとするんだから、聞いてあげない」


春奈が考える通り、そもそも光が「子供の頃から何となく興味があった」のは阿修羅だけだった。

それ故、そもそも光が、そんな八部衆のことを、詳しく答えられることもないのである。


「そんなことより」

春奈は、地蔵と阿修羅の会話の中で、気になっていたことがあった。

「とにかく、暗闇と破壊、殺生が好きな神だ、考えも杓子定規で了見が狭い」と阿修羅に表現された神である。

そして、今回の闘いの相手は、おそらく、その神になる。


「そうなるとだなあ・・・」

春奈は、華奈の母、美紀の顔を思い浮かべた。

美紀は、世界の宗教史の大家である、その美紀に聞けば、その神のことがわかるかもしれない、結局よくわからなかった八部衆についても教えてくれるだろうと思った。


「うん、華奈ちゃんを家で練習させながら、お迎えを兼ねて来てもらって、教えてもらうのがいいな、光君に珈琲淹れさせてさ、帰りにケーキでも買っていくかなあ、たまにはケーキもいいなあ」

「そう思ったら、急に食べたくなってきたぞ」

やっと、春奈の落胆顔が、笑顔に変わった。

案外、「甘いものに弱い」春奈である。



ところで、正月以来、ほとんど出番が無かったルシェールはずっとイライラしている。


「だって、お正月の新年ミサが終わって、やっと光君の顔を見たと思ったのに、ソフィーに抜け駆けされるしさ」

「だいたい、この時代での光君の妻の最短距離にいるのは、ルシェールなの」

「ソフィーって言っても、力はあるけど、私のほうが若いしさ」

「何しろ愛の妙薬を作れるのは、イエス様以外には私だけなの」

「それは、しっかりマリア様から言われているし、マリア様の希望と期待も強い」

「まあ、確かに伊勢大神の巫女の由香利さん、寒川様の巫女由紀さんも、力は強い、でもルシェールには愛の妙薬の実績がある」

「あれは、単なる治療法じゃないよ、愛なの、ただ、みんなそれを認めないのが、気に入らない」

「まあ、華奈ちゃんは・・・他の有力者全員が、死んじゃうとかの場合だけ、残り物に福しかありえない、あまりにも実力不足」

「春奈さんは、もう無理、お歳だもの」

様々、イライラは募るけれど、解決策はただ一つ、光の顔を見ることである。


「そうかあ・・・最近、光君にお菓子食べさせてないなあ、あの子のお菓子食べる顔が可愛いし、シュークリームこぼすのも好きだった」

「ああ、エクレアでも、口の周りがチョコだらけ、手にもクリームべったりってあったなあ、またそれが見たくなった」

「どうせ、今でも、食べるのが下手だろうし」

ルシェールは、思いついたら行動が速い。

さっそく、春奈にメールを打ち、シュークリームとエクレアを作り始めたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ