表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
阿修羅様と光君  作者: 舞夢
300/419

光と「お相手候補たちの過去」、年賀状騒動

動画が進んでいく。


「へえ、みんなで奈良公園を散歩している」圭子

「桜がきれい」美紀

「でも、ほんと、光君ずっとニコニコ顔だね、ピカピカに光っている」美智子

「うん、あの笑顔でいつも癒された」ナタリー

「少し気難しいところがあったソフィーもね、光君の前では、素直なの、ほら光君から飴をもらっているでしょ」ニケ


「あ、ルシェールが光君の腕を組んだ」楓

「わっ、二人して楽しそうに踊っているし」

春奈は悔しそうな顔になる。

「ね、そこで華奈が泣き顔になっているでしょ、今も同じ」

美紀の冷酷な分析で、華奈は再び泣き顔になった。


動画は教会の内部に場面が移った。

「あれ?歌も残っているんだ」光

「ああ、全員で歌ったっけね」圭子

「そうそう、史さんが光君に指揮させて、菜穂子さんがピアノを弾いてね」

「へえ、モーツァルトだね」春奈

「あれ?楓ちゃんは入っているけど、華奈ちゃんは?」

美智子は華奈の姿を探した。


「ああ、光君の隣に立っている」圭子

「どうして・・・あ・・・そうか・・・」

春奈は、華奈の大声、子供声を思い出した。

それで、母親美紀から合唱に入れてもらえなかったと判断したのである。

ただ、動画に映る幼き華奈は、ニンマリとしている。


「結局、そばにいればいいのか・・・逆にあなどれない」

「でもなあ、なんで私いないんだろう、それが年齢差かあ・・・」

春奈は華奈に強い警戒心を覚えたけれど、動画に自分だけが移っていないことが、年齢差に原因があるとはいえ、本当に寂しかった。




奈津美の温泉旅館で、大晦日から元旦までを過ごした翌日二日に、光たちの都内組と圭子たち奈良の巫女集団は、奈津美の温泉旅館の送迎バスで、それぞれ帰宅の途についた。

ただ、ソフィーだけは「公務」があるため、別に帰った。


別れ際に、奈津美を含めてほとんどが泣き顔になった。

光が最後に言った言葉、

「全てが片付いたら、奈良でお花見しましょう」

その言葉だけが、全員の寂しさと別れがたさに、一筋の灯りをともしていた。




光と春奈、家に戻ると目を疑うほどの大量の年賀状が届いていた。

特に光宛が、異常に多い。

クラス内の学生、学園内の学生からの年賀状が多いけれど、やはり音楽を中心に学園外でも活動を行ったためなのか、他校の女子高校生や、晃子など音楽家からの年賀状が多い。

少し浮かない顔になった光の顔を、春奈はすばやく察知した。


「ねえ、光君、ほとんど出していない人ばかりでしょ?」

「光君が出した年賀状って、十枚ぐらいだよね」

確かに大晦日に光が出した年賀状は、本当に少なかった。

十枚でも多すぎるかもしれない。


「うん、これ全部返すの面倒だなあ、そのままにするかなあ」

やはり、怠け者の光である。

春奈にとって予想通りの反応になった。


「それでもね、ちゃんと返すものなの、年賀状だし、大変だったら手伝うから」

春奈としても、教育者、光を指導しなければならないと思った。

「そうですか、じゃあ・・・手伝ってもらおうかなあ」

光は素直に春奈に年賀状の束を渡してしまう。


「うん、まずは住所録からだね」

光がPCを開いたのを見て、春奈は住所録作成の手伝いをしようと思った。

とにかく、目の前でやらせないと、絶対に動かないと思った。

何しろ、亀の光なのである。


「じゃあ・・・住所と名前を読んでいくから、間違いなくね」

春奈に、指示されて光は懸命に住所録を打ち出す。


ただ、春奈の、「読み上げる声」は、しばしば止まる。

春奈は、住所・名前を読み上げながら、中身もしっかり読み取るのである。



「何よ、女の子ばかりで・・・」

最初はブツブツ言っていただけであった。

「光君ラブって何さ、そんなのばかり」

「どうして年賀状にキスマークを書くの?どうせ、私にはかなわないくせに」

「一緒にコンサート?やっぱり晃子さんか・・・うーん・・・リスク発生だ」

「わーーー由香利さんだ、字がキレイ・・・さすが」

「由紀さんのも、品がある、強いなあ」

「う・・・ルシェール・・・全部フランス語か、私が読めないと思って・・・あとで翻訳機してやる」

「なんとソフィーまで・・・これ、ギリシャ語?ますますわからない」

「圭子さん、奈津美さん、美紀さん、げ・・・鬼母の美智子さん・・・」

「ナタリーにニケか」

「どうせ年末年始一緒なのに、なんで年賀状出すんだろう」

「わ・・・小沢先生かあ・・・達筆!さすがだなあ」

光がしばしば待たなければならないほど、春奈の「読み上げる声」は止まっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ