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阿修羅様と光君  作者: 舞夢
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第3話春奈先生と奈良へ

しばらくして、春奈先生が光の顔を見た。


「ねえ光君、今週の土日は空いている?」

いきなり、予定を尋ねられた。


「はい、特にありませんが」

確かに何もない。


「うん、じゃあ奈良に帰ろう」

「どうしても見せたいものがあるの」

「君の顔見ていたら、うん、見せたくなった」

これもいきなりの誘いである。


「あ・・・はい・・・わかりました」

何も考えなかったけれど、すんなりと「帰る」ことに同意してしまった。

何故、何も考えなかったのかはわからない。


ただ、それが全ての始まりであった。



さて、光は父親と杉並区に「一応」、二人暮らしである。

母親は小学生の頃に世を去り、兄弟はいない。

また、父親は出張が多く、ほとんど家にいない。

今も北海道に長期出張中で、実質はいつも家の中に一人である。

そのため、家事は洗濯と掃除程度、食事はコンビニが多い。


父の実家には、春奈先生との話があった日に連絡した。

同い年の従妹の楓が電話に出た。

「へえ・・・先生とねえ・・・偶然だねえ、でも光君、久しぶりだから大歓迎だよ」

「柿の葉寿司作っておくよ」

「先生って近くなんだ、ふーん、じゃあ知っているかなあ」

楓の反応も不思議そうであった。



春奈先生とは品川駅で待ち合わせた。

奈良までは新幹線で京都、京都からは近鉄で行く予定である。


「ごめんね、いきなりだったかな」

普段着の春奈先生も、なかなか素敵である。

ほのかな香りがしている。

和風の香だと思った。


「いえ、たまには奈良もいいかなあと思って」

本音である。子供の頃から奈良に行くとほっとする。

「うん、私も落ち着く」

春奈先生は珈琲を買ってくれた。

並んで座って珈琲を飲むが、少しドキドキする。


「ところで、今日はお父さんのご実家に泊まるの?」

春奈先生から尋ねられた。


「はい、先生からお話があった日に、連絡しました」

素直に応えた。


「うん、たぶん私の家も近いと思うから、一旦荷物置いてから、お散歩しましょう」

「奈良公園の周りがいいかな」

「でも、倒れないでね」春奈先生は笑っている。


確かに奈良公園全体を歩くとかなりな距離になる。

奈良町元興寺のあたりから歩くと、この暑い夏の日、また倒れてしまいそうである。

「うーん、ちょっと心配・・・でも・・・」

つい本音を言ってしまった。


ただ本音は「ちょっと心配」までで、「でも」は「言葉のついで」、つまり何も考えていなかった。


「でもって?」

何故か春奈先生は「でも」に反応した。

そして、春奈先生は見つめてくる。

光は、ますますドキドキしてしまう。

何か言わなければならないと思った。

そうしないと場が持たない。


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